本稿は私見が含まれた記事です。
100m9秒台に突入するスプリンターが複数人出るなど、活況を迎えている陸上競技界。ですが「部活動」という括りでみると、中学から高校にかけて半数以上が競技を辞めてしまうという現状があります。
今回は若年層の選手が「陸上競技を辞める要因」についての話題です。
概要
スポーツと生活習慣、健康の関係性が広く知られるようになっていく中で、部活動の継続・非継続の要因に関する研究は継続的に行われてきました。
その結果、時代ごとの特徴はあれど、継続者と非継続者には概ね次のような傾向があることが分かってきました。
継続者は先輩や友人との交友面や所属する部活動の活発な活動に惹かれ、非継続者は「帰宅時間が遅くなる」「勉強との両立が難しい」といった生活時間との兼ね合いや「やりたい種目がない(他のスポーツがしたい)」といった欲求がみられるようです。
研究紹介
今回は陸上競技研究紀要より「高校生における陸上競技の継続および非継続に関係する要因」をご紹介したいと思います。
対象
茨城県の全日制高校に通う2年生を対象とした質問紙調査を実施し、返信を精査した結果、633名を分析の対象としています。
研究の内容
先行研究を基に「生年月日」「性別」「中心的に実施していた学外活動」「最高成績」「家族の支援」「継続・非継続の理由」を中心とした設問の質問紙調査を実施しています。
結果
陸上競技を継続した者は男子が 47.3%、女子が 30.2%。半数以上が競技を辞める結果となっており、なかなか厳しい数字であることが分かります。
男女の継続理由は以下のように「自分の技能や競技成績を伸ばしたい」「そのスポーツや活動をするのが好き」といった理由が大半を占めています。
一方、種目を変更した理由としては 「新しい活動に挑戦したい」といった前向きなものがある一方「自分の能力に限界を感じた」「中学の時の練習などがつらかった」といった回答も少なくありません。
途中退部となると後ろ向きとも取れる理由が増えていき「興味がなくなった」「先輩や友達とうまくいかなかった」「怪我をした」などの割合が高くなっています。
競技成績については「県大会入賞」以上の競技成績で継続者の割合が最も高く「市町村または地区大会出場」は継続者が20%を割り込む結果となっています。
「練習がつらい」ということが非継続の要因となる一方、競技成績が低い層も非継続に流れてしまいがちであることが分かります。
また、家族の支援については「よくあった」層が競技を継続する傾向にあるようです。これは当然といえば当然ですね。
まとめ
・競技を辞めるのには前向き・後ろ向きの理由がある
・競技継続には競技成績や家族の支援が関係している
部活動、スポーツ、陸上競技は人生の全てではありませんが、人生をより豊かにしてくれる可能性のあるものです。また、世界大会に出場するような選手の過半数は全日中に出場していません。そういった面からも「自分の能力に限界を感じた」というような理由でのドロップアウトは勿体なく感じます。
熱を入れすぎず、一定レベルの成功体験を味わってもらう。加減が難しいですが、これがユース期のアスリートに必要な指導のあり方ではないでしょうか。
今回はここまで。