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マスクを付けてのランニングはどのようなトレーニング効果が期待できるのか

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

冬場のトレーニング中、たまにマスクをしながら走っているランナーを見かけることがあります。

マスクは粉塵や感染症から身を守るためのものですが、トレーニング効果としてはどのような点が期待できるのでしょうか。今回は「マスクを付けてのランニング」の話題です。

概要

実際にマスクを付けて走ってみると分かりやすいですが、通常時と比べて息苦しい感じがします。

このことから、マスクには擬似的に高地トレーニングのような低酸素状態を作り出す効果があると言われてきました。実際、そのようなトレーニング効果を狙ったスポーツ用マスクも多く開発されています。

一方、マスクをしてのトレーニングには効果がないという説もあります。このことから、対象や条件設定によってパフォーマンス向上効果の有無が分かれると考えられます。 

研究紹介

今回は東洋大学の研究より「サージカルフェイスマスクを使用した走行が呼吸機能に及ぼす影響」をご紹介したいと思います。

対象

競技スポーツを行なっている男子大学生8名が被験者となっています。全員が長距離選手というわけではなく、短距離選手から体操選手まで様々な種目が混在しています。

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研究の内容

上り勾配8.6%のトレッドミルを用いて最大酸素摂取量(Vo2max)を測定した後、その数値をもとに「60% of Vo2max」及び「80% of Vo2max」相当の速度を設定し、呼吸制限あり/なしの条件のもと呼吸や心拍数を測定しています。

なお、呼吸制限はスポーツ専用マスクではなく市販されているサージカルフェイスマスクを使用しています。

結果

「Vo2」「心拍数」「% of Vo2max」に有意な差がなかった一方「換気量」「一回換気量」「呼吸数」「酸素換気当量」に有意差が認められました。

これは「60% of Vo2max」「80% of Vo2max」どちらの条件でも同様の傾向が見られました。

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ざっくりいうと、マスクを付けたことで呼吸数が減少し、一回換気量が増加したということです。50% of Vo2max相当で行われた先行研究では一回換気量に有意差がなかったことなどについては、以下のように考察されています。

(前略)これは、本実験の方が最大酸素摂取量に対する運動強度が高かったためと考えられる。

(中略)マスクの使用が呼吸循環器に与える影響は換気量、呼吸数を低下させて強度によって一回換気量も増加させることが考えられる。松井らは運動時の換気量が中等度の強度まではマスク時の努力性の呼吸によって普通時と大差ないが、より強度の高い運動ではマスク時の換気は努力性の呼吸にもかかわらず少なくなると報告している。したがってマスクを使用することで呼吸機能の向上には60および80%の運動が適切であると示唆される。

まとめ 

マスクを付けてのランニングについて以下のことがわかりました。

・呼吸数が減少し換気量が増加する

・呼吸機能の向上が期待される

・強度は60及び80%相当が適切と考えられる

今回ご紹介した研究では、継続したトレーニングの効果は検証されていません。したがって、実際にどの程度のパフォーマンスアップが見込めるのかは更に検証が必要と思われます。

そもそも、60%強度や80%強度というのは中々きつい強度です。実際に80%強度では心拍数が170/分ほどになっている被験者も見られたことから、毎日のように入れていくのではなく、ピンポイントに過負荷をかけるトレーニングとして取り入れていくのが良いかもしれません。

 

今回はここまで。