本稿は私見が含まれた記事です。
陸上競技の投てき種目など爆発的な力発揮を要するスポーツでは、しばしば大声を出しながら試技を行う選手が見られます。
「うるさい」という理由からスポーツジムなどでは敬遠されがちですが、果たしてどのような効果があるのでしょうか。
今回はこの「大声」の話題です。
概要
運動中に大声を出すことにより力が出しやすくなる、というのは多くの人が経験的に知るところでしょう。この現象は「シャウト効果」と呼ばれています。
シャウト効果は主にスポーツ関係の分野で研究されており、それによると最大筋力、筋パワー、筋の収縮速度が数%〜10%前後向上するといわれています。
大声を出すために体幹に力が入り力が発揮しやすくなる、大脳皮質が掛け声により活性化する(神経系のリミッターが外れる)など様々な考察がなされていますが、概ねパフォーマンスがアップするという結果が多く出ています。
研究紹介
今回は広島経済大学研究論集第39巻第1.2号より「ストレッチング、噛みしめ、シャウトが膝伸展筋力に及ぼす影響」をご紹介したいと思います。
対象
若年の男女38名が被験者となっています。特に研究本文には記載がありませんでしたが、何かのスポーツをしている学生の集団でしょうか。少しだけ平均よりガタイが良い気がします。
研究の内容
実験装置により右脚の膝伸展力を測定した後、5つの群に分かれ2度目の測定を行い、それぞれの効果を検証しています。
シャウト群の説明が良い感じですね。
噛みしめ群は歯を噛みしめながら, シャウト群は叫ぶ練習をした後,検者と共に叫びながら行った。
結果
「動的ストレッチング+W-up群」と「シャウト群」の膝伸展筋力は有意に増加し「静的ストレッチ群」は有意に減少しました。
「コントロール群」「噛みしめ群」は有意差が認められませんでした。特に「噛みしめ群」については個々人の噛み合わせの差で膝伸展筋力の向上が見られた被験者、そうでない被験者が出たのではないかとの考察。
コントロール群のPre/Postが綺麗に揃っているのもスゴいですが、シャウトの効果がウォーミング・アップや動的ストレッチと同じ程度の結果となりました。
まとめ
・大声(シャウト)で一時的に筋力が向上する可能性がある
・局所的にウォーミングアップ+動的ストレッチ並の効果が見込める
・噛みしめよりも効果が高いかもしれない
今回ご紹介したものは、限られた場面での膝伸展力の結果です。例えば高重量のスクワットやデッドリフトは挙上後に腹圧の余韻(?)で結果として声が出ることはありますが、挙上の最中に発声していては腹圧が下がって危険です。
また、ウォーミングアップをしっかり行なった上でシャウトをすることで、どの程度上積みができるのかは分かりません。
とはいえ基本的には多くの研究で筋力向上の効果が報告されていますので「ここぞ」という場面では大声を出してみるのも良いと思います。
今回はここまで。