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陸上競技の「応援」は選手にどのような効果をもたらすのか

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

スポーツの優勝者インタビューで「応援が力になりました」というのは、ある種の決まり文句といえます。

自分自身にフォーカスすることが重要な陸上競技でも、このフレーズを耳にすることが多々あります。しかし、実際問題として応援にはどのような効果があるのでしょうか。

今回はこの「応援」の話題です。

概要

スポーツにおける「応援」とは「選手に対する声かけ(歌)や拍手などにより、味方やひいきの選手を励ます」ことであるといえます。

これらは選手への直接的な助力ではありませんが、気分を高揚させたり不安を取り除くなどの心理的効果が期待されます。実際、球技種目などでホームゲームの勝率が高くなる「ホームアドバンテージ」の存在が数多く報告されていることからも「応援」が何らかの心理的効果をもたらしている可能性は高いといえます。

応援の効果については「気分が盛り上がる」といったポジティブな効果もありますが、一方で「緊張してしまう」といったネガティブな側面もあります。

研究紹介

今回は順天堂大学の研究「陸上競技における応援が選手にもたらす心理的効果」をご紹介したいと思います。

対象

関東の大学陸上部員677名に質問調査を実施し、有効回答264名分を対象としています。競技レベルは関東インカレ一部のB標準を基準に上位・下位に群分けされています。

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研究の内容

個人情報のほか「他者に対する態度」「感情効果」を質問項目としています。前者は回答者の性格、後者は応援を受けたときの快適度やモチベーションに関するものです。

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また、応援効果の検討にあたり以下7つの仮説が設定されています。

1.外向性の選手は感情効果が高く、内向性の選手は緊張度が高い

2.チームコミットメントが強いほど感情効果が高い

3.女性は感情効果が高い

4.調子が良いとき”冷静”、悪いとき”緊張”の気持ちになる

5.大会重要度が高いとき、感情効果も高い

6.競技レベルの高い選手は”冷静”の気持ちになる

7.種目によって、感情効果が異なる

結果

全般的な傾向として、調子が良いときや大会の重要度が高いときに感情効果が高まりやすいことが示されました。また、チームとの関わり方も感情効果に影響を与えることが示されました。

仮説については1〜3、5、7が支持され、4および6が不支持・棄却されました。仮説4では調子が良いときに興奮度が低く快適度・緊張度の高い「冷静」状態になるとしていましたが、実際には興奮度が高く緊張度が低い「活気」状態になることが示されました。

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こうして見ると緊張度に与える効果はさほど変わりないように見えます。調子が悪いときには快適度や興奮度の高まりが低いので、相対的に緊張度だけが高まってネガティブな影響を受けてしまうといった感じでしょうか。

仮説6では競技レベルの高い選手は「冷静」状態になるとしていましたが、快適度・興奮度ともに女性は下位レベルの競技者の方が高く、男性は上位レベルの競技者の方が高い結果となりました。

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仮説3が支持されたことからも分かるように、女性の方が感情効果が高く出る傾向のようです。 

個人的に興味深かったのは、種目によっても差が出た点です。特に男子のフィールド選手は快適度・緊張度・興奮度が高まる結果となっています。

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これについては次のような記述があります。

(前略)男性は主導権を自分に帰属させたい意識が強いこと、女性はその意識があまり強くないことを指摘している。このことから、行動選択の主導権が高いフィールド種目では、男性は応援を受けることにより元気づけられることが示唆された。

小さな大会ですとフィールドは隅の方で細々とやっていることもありますが、これを見る限りもっと応援した方が良いのでしょうか。

まとめ 

・応援は選手に何らの感情・モチベーションの変化を与える可能性が高い

・調子の良しとき、大会重要度が高いときに感情効果が高まる

・男女差、チームとの関わり方で受ける感情効果が異なる

「応援」というと、つい押せ押せの空気を作ってしまいがちですが、選手の性格特性や試合状況を加味して応援する必要がありそうです。インハイやインカレで凄い記録が出るのも、お祭りのような空気感が関係しているのかもしれませんね。

文字数の関係でかなり端折ったご紹介となってしまいましたので、できれば参考リンクの原著をご覧いただければと思います。

 

今回はここまで。