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ライフスタイル誌「KINFOLK」の余白に見るデザインの要諦

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数年前、イベントを企画・開催する部署に在籍していました。

告知用のフライヤーや事業説明のためのポートフォリオを作ろうにも、前任者の残していったフライヤーのデータは画面一杯全てが太字・大文字で構成されており、情報の洪水状態。

結果すべてをイチから作り直したわけですが、そんな時に役立ったのが「余白」の意識です。今回はその「余白」の見本ともいえる雑誌「KINFOLK(キンフォーク)」をご紹介したいと思います。

概要

Kinfolkは、ゆっくりとした暮らしを提案するライフスタイル誌です。読者のみなさまがよりシンプルな生活を送り、素晴らしいコミュニティを築き、そして多くの時間を友人や家族とともに過ごすためのコツを探ります。

KINFOLK 裏表紙より引用

「KINFOLK」は家族や親しい者を意味する"KINSFOLK"から「S」を取った造語です。

由来となった言葉のとおり、家族や友人、隣人といった小さな集まりという意味の「スモールギャザリング」をサブタイトルとして掲げています。

2011年にアメリカのポーランドで創刊され、2013年からは日本語版が発売。季刊誌として年4回(3、6、9、12月の5日頃)発刊されています。

「ライフスタイル誌」ということで衣・食・住や旅、仕事や人生哲学など、幅広い分野を扱っています。

一方で購買を促すような具体的なブランドやメーカー名の記載は基本的になく、誌面には企業広告も一切載っていないという風変わりな雑誌です。

大胆な「余白」 

KINFOLKの誌面構成で真っ先に目を惹くのが、美しい写真と「大胆に取られた余白」です。

写真・文章にもかなりスペースを与えており、さながら写真集のような印象すらあります。

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▲フォントも全体的に小ぶりで上品な造り 

創刊者の一人であるケイティ・ウィリアムズ氏によると、読者がゆったりとページをめくることができるよう、余白を多用しているとのこと。

ちょっとしたレシピのページもありますが、ゴチャゴチャとした作業途中の写真などは一切ナシ。徹底したミニマルさです。

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▲謎の食べ物

ここで「センスが良いな」と思うのは、画一的に写真や文章を小さくまとめているわけではないという点です。

写真を置いているわけでもない場所にガッツリ空白をとったかと思えば見開きで写真を載せたり「温浴しよう」というフレーズのために2ページ一気に使ったりしています。

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▲写真もないのに謎の空白 

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▲見開き。過度にフォトジュニックでないのも逆に印象深い 

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▲風呂に浸かろう!で1ページ、写真でさらに1ページ

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▲風呂はいいぞ!の説明文が少しと写真1.5ページ分

ページの隅々まで文章が巡らされていては窮屈ですし、ドン!と写真が連続していても読み流されてしまいます。

この「緩急」のバランスがKINFOLKの誌面構成の魅力の一つだと思います。 

情報発信は引き算

何かを告知する際「誰にでも伝わるように」「親切に書こう」などと考えると、つい情報過多になりがちです。

一目見て情報量が多いチラシやフライヤーは(そういうのが好きな人もいますが)基本的には敬遠されます。つまり「伝わる」以前に読んでもらえないわけです。

KINFOLKほどの余白は中々取れないと思いますが、目を惹くデザインには引き算が大事だな、と再度思った次第です。

 

今回はここまで。