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陸上短距離走の練習メニューを学生主体で組む際に注意すべきことは何か

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

多くの学生スポーツ選手は、部活動という枠組みの中で競技に取り組んでいます。

中には専門的指導ができる顧問がいないため、部員自身が練習メニューを組んでいるよう学校も少なくないと思われます。

今回は学生主体のチームで練習メニューを組む際に陥りやすい問題、注意すべき事項についてご紹介します。

概要

物事にはメリット・デメリットが両方存在します。学生自身が主体的に練習メニューを組むことについても同様です。

部員自身が主体的に計画を立てることで責任をもってトレーニングに取り組むことができると考えられる一方、メニューを考案する選手の知識や能力、性格に内容に影響されやすく、偏りが出やすいといった問題もあります。

研究紹介

神戸市立工業高等専門学校研究紀要の「陸上競技部短距離選手の競技力向上のための新練習体制構築 : 選手兼指導者による指導事例とその効果」では、学生部員主体で起こった運営上または練習計画・ メニューの作成・実施上の課題として、次の6点を挙げています。

1.専門的な知識が不十分であったため、中には慣習的に実施しているだけの練習もあり、作成者自身も含めた選手がその目的を理解できていない練習が多い

2.練習メニューが立案者の特性(特に専門種目)に依存しており、立案者の専門種目以外の記録が向上していない傾向にある

3.事前に練習計画を立てるのではなく、当日に練習メニューを考案・実施することが長く続いている。その結果、知らず知らずのうちに練習内容に偏りが生じ、一部の部員に練習のマンネリ化による記録の停滞(スランプ現象)が見られる

4.短距離走で最も重要となる「最大スピードを高めるトレーニング」が少ない

5.ウォーミングアップ不足や、実戦形式の練習不足などが原因で、試合によって記録の良し悪しの差が大きい

6.筋力不足が顕著であることに加えて、ランニングスキル(フォーム、スタート方法、加速技術など)の習熟水準が低いため、特定の部位に負荷がかかるような走りをしている選手の故障が目立つ

「1」や「3」については学生主体のチームや、未経験者が指導している場合に頻発する問題ではないでしょうか。

これらの問題に対し、事例報告では外部介入で以下の7つの施策を実施しています(【】内は対応する課題の番号)

1.学生と顧問の合議による練習計画体制【1】【2】

2.期分けに基づく練習計画【3】

3.最大スピードを高めるトレーニング【4】

4.ウエイトトレーニングの導入【6】

5.短距離基本練習のルーティン化【1】【5】【6】

6.校内記録会の定期的な実施【3】【5】

7.他チームの指導者との交流【1】【3】

ひとつひとつの取り組み自体に目新しさこそありませんが「課題に対応する施策を組んでいる」ことがポイントかと思われます。

施策の方向性が決まれば「具体的なメニュー」が枝葉としてついてきます。トレーニングの流れも介入の前後でかなり変化しています。

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また、期分けをしっかりしたことにより怪我が減り、継続的なトレーニングができたことにより最大スピードや筋力の向上が見られたとのこと。

事例のチームは部員数23名だったようですが、その年の秋季大会では多くの部員がシーズンベスト・自己ベストをマークしたようです。

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まとめ

・場当たり的な練習は、内容の偏りを生じさせやすい

・課題を抽出→対応する施策を策定することでメニューがより具体性を帯びる

今回ご紹介した事例では年度始めからの介入でしたが、タイミングとしては冬季練習の開始時に話し合いの機会を設けるのが効果的です。

ちなみに、この方向性を決めるミーティングを学生だけで実施すると「持久力も筋力も付ける、スピード練習も頑張る」のようなボヤッとした目標が出来上がってしまう可能性があります。

また、ミーティングが長引くと1から10まで具体的なメニューまで組み始めてしまう可能性もあります。

したがって、この作業の部分はできればチーム内でも第三者に近い立場の人物(中学・高校であれば顧問、大学であれば院生など)がファシリテータ役を務めるのが良いのではないでしょうか。

 

今回はここまで。