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日本陸連の「中学校部活動における陸上競技指導の手引き」がなかなか有用そう

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

「競技未経験で陸上部の顧問になってしまった」「陸上部に入ったけれど右も左も分からない」

そんな方は教本を買う前に、日本陸上競技連盟(JAAF)が公開している「中学校部活動における陸上競技指導の手引き」を一度読んでみて下さい。

この手引き、経験者の目から見ても有用そうな仕上がりとなっています。今回はその内容を少しご紹介したいと思います。

概要

「日本陸上競技連盟(Japan Association of Athletics Federations)」は陸上競技の普及・振興を主たる目的とする公益財団法人で、日本国内の陸上競技を統括する上部組織です。通称「日本陸連」「JAAF」と呼ばれています。

各スポーツでいう「◯◯協会」 の総本部と同じような組織です。

陸上競技はクラブチームもそこそこありますが、多くは中高の部活動が受け皿となっており、近年は他の部活動と同様に担当教員の負担が問題化しているようです。 

今回ご紹介する手引き公開にあたっても、そういった背景があったことがわかります。

「一人でも多くの人が陸上競技を楽しみ、そして関わり続けるために」これは、本連盟が本年11月に公表した競技者育成指針のスローガンです。

陸上競技を楽しめる環境の中で、各々が力を出しきり、その後も生涯スポーツとして陸上競技を続けることを目指しています。

(中略)

分岐点に差し掛かった運動部活動ですが、指導者として部に関わる教員の負担軽減も、あわせて考えていかなければなりません。中には陸上競技の経験のない先生、本格的なスポーツの経験がない先生が指導にあたる状況も見られ、運動部活動指導が時間的な制約になるだけではなく、精神的なストレスにつながることも考えられます。

本連盟としては、陸上競技初心者、指導初心者の先生方の役に立ちたいという思いで、この『中学校部活動における陸上競技指導の手引き』を作成いたしました。

(後略)

「中学校部活動における陸上競技指導の手引き」 より引用

資料紹介

「中学校部活動における陸上競技指導の手引き」は2018年12月に公開されたもので、比較的新しい資料です。

また、このテの手引きは前段部分が冗長になりがちですが、練習手段・方法、練習計画の立て方、スポーツ傷害の予防、競技会で力を出すための心得と競技ルール、安全管理などがコンパクトにまとまっています。

ページ数こそ100と少々ありますが、図解も多く流し読みしても大丈夫な所もあります。初心者であっても、3日あれば内容が概ね理解できるようになっていると思います。

個人的にスゴいと思ったところ 

手引きの全ページ中、全体の約半分が各種目の基礎知識に割かれています。手引き中の項目は以下のとおり。

・短距離走

・クラウチングスタート

・中長距離走

・リレー

・ハードル走

・走高跳

・走幅跳

・砲丸投

・ジャベリックスロー

短距離走であれば「レース構造」の説明からドリルの解説が入っています。小学生のかけっこの世界観からすると「100m走には4つの局面がある」って衝撃ですよね。

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個人的には「スターティングブロックのセット」が載っているのは嬉しいです。

陸上競技の経験者・未経験者を見分けるにはクラウチングスタートの姿勢でだいたい分かります。

未経験者の場合、前足のセット位置が前すぎて膝が立ったような姿勢になっていることが多いです。あれではスムーズに前に出ることができません。

また、ブロックのセットは最初に教えられたセッティングを後年まで続ける選手が多いので、最初にスタンダードな方法から入るのは非常に重要だと思っています。

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また、リレーのバトンパスも受け手は運動会のようにイチイチ持ち替えたりしません。

2018年にはいわゆる「バトンゾーン」の改正がありましたが、この手引きではシッカリ記載されています。

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その他、補強運動(筋トレ)や練習サイクル、障害予防や競技用語などの解説もあります。

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まとめ 

中学生の自分に読ませたい内容です。

個々の種目のドリルやトレーニング解説のボリュームは少々物足りませんが「かけっこ」から「陸上競技」への入門書としては十分実用に足る内容になっているのではないでしょうか。

世間では色々言われがちな日本陸連ですが、これは良い仕事です。

経験者の方も指導の際には良い復習になると思いますので、ぜひご一読ください。

 

今回はここまで。