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昔の少年補導員手帳に往年の不良文化を見た

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高度経済成長期後の1980年代、少年非行が社会的な問題となりました。

縁あって当時の少年補導員に支給されていた手帳を発掘しましたので、今回はその内容をご紹介します。

少年補導員とは

「少年補導員」という役職をご存じでしょうか。

地域の警察署長などから委嘱された方々で、少年非行を防止することを任務としています。

具体的な活動は「少年の補導」と「有害環境の排除」です。

少年の補導

・地域の非行少年などの発見と連絡

・街頭指導

・継続指導

・少年相談

有害環境の排除

・少年福祉を害する事案の発見と連絡

・有害環境の発見と連絡

委嘱を受けるにあたっては地域などからの推薦を要し、警察の方で前科の有無を調査されます。

身分的には公職ですが活動には交通費程度しか支給されないため、実質的には地域のボランティアのような形になります。

少年補導員手帳

今回発掘されたのはコチラ。

具体的な発行年度の記載はありませんが、恐らく80年代前半くらいの代物かと思われます。

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▲だいぶ年季が入っている

少年補導員は公職ですが、いわゆる警察権は持っていません。

したがって、警察でいうところの少年補導が非行少年を発見してから調査・捜査から家庭や学校への連絡、児童相談所、検察庁、家庭裁判所などへの送致あるいは通告するまでの一切を総称するのに対し、少年補導のそれは少年を非行から立ち直らせるための助言・指導、保護活動がメインです。

少年補導の対象

少年補導員の活動の中では、以下を補導対象としています。

・犯罪少年

・触法少年

・虞犯(ぐはん)少年

・不良行為少年

刑罰法令に抵触した14歳未満の少年は触法少年、14歳以上20歳未満が犯罪少年となります。

「虞犯少年」と「不良行為少年」は割と地続きです。

「虞犯少年」は正当な理由がなく家庭に寄り付かないなどの特徴があり「不良行為少年」は飲酒・喫煙・家出・喧嘩などを繰り返す少年を指します。

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▲なかなか細かく分けられている

補導員に求めらること

先ほども触れた通り少年補導員には警察権がありませんので、危険行為を行う少年を力づくで止めたりすることまでは求められていません。

あくまで声かけや話し合いを通じて少年本人に寄り添い、非行から立ち直らせることが本分です。

少年補導員はその性質上、公職者経験者が多く在籍しています。具体的には警察OB、退職した教員、議会議員、商工会役員などです。

立派な役職に就いていた方ほど、非行少年と接した際「不法行為を行うとはけしからん奴だ!性根を叩き直してやる!」といった接し方をしてしまう方もいたのではないでしょうか。

そのせいか、手帳内にはちょっと釘を刺すような項目があります。

多くの人のなかには、少年補導とは非行少年を摘発し、その非違を糾弾することだと勘ちがいしている人もありますが、これは明らかに補導の意味をとりちがえているわけで、補導の真のねらいは少年の立ち場にたって少年を善導することにあることはくりまえすまでもありません。

なまはんかな補導が、少年の反発をかい、かえって非行化のほうに追いやる例は決して少くありません。

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▲話し合いの項目は細かく分けられている

「高圧的な接し方をしない」「一方的な説教に効果はない」といったことが繰り返し書かれています。

付録:現代ヤング用語集

当時はインターネットもありませんでしたから、年配の方は今以上に若者文化に疎かったことでしょう。

そういった配慮からか、巻末には「現代ヤング用語集」なるものが付録として掲載されていました。

すでに「ヤング用語」という語感が今となってはヤングではないのですが先人の苦労の一端が伺えます。

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▲「いまひゃく」とか初めて見た
現存していない(淘汰された?)言葉も見受けられます。

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▲死語の山

「話がちくわ」「話がパセリ」 などは本当にあったのでしょうか?

今やインターネットも2000年より以前の情報はかなり消失してしまったからか、検索にも引っかかりません。

当時の補導員の方々は若者とスムーズに接することができるよう、これを参考にしたのでしょう。

服装などから見た不良化のきざし

服装の乱れは心の乱れ。

ということで「服装などから見た不良化のきざし」というイラストが掲載されています。

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クセが強い。

まぁ今のファッションも20年後、30年後には「何だこれダッサ!」と評される運命でしょうから何とも言えませんが、当時の不良は「ワルでーす!」と自ら喧伝するような服装を好んだようですね。

世相と少年補導

その時代の文化は世相とリンクしています。若者文化や少年の非行も例外ではありません。

現代の非行は当時のような喧嘩、深夜徘徊や服装の不良化のように分かりやすいものではなくなっているようで、インターネットを介した被害が多くなっているようです。

SNSは外部介入が難しく、警察・学校・地域ボランティアも苦慮していると聞きます。

時代は繰り返すともいいますが、そのうちこんなファッションの不良が復活する可能性もあるのでしょうか。

 

今回はここまで。