向かい風参考記録

陸上競技 その他 いろいろ

短距離走のパフォーマンスをアップさせる補助運動があるのだとか

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

垂直跳びの前にスクワットをすると高く跳べたり、走る前に少し筋トレをすると身体が動きやすく感じたことはありませんか。

近年の研究では、このような運動を適切なタイミング・負荷を選んで実施することでパフォーマンスを向上させる可能性があることがわかっています。

今回はそういった「補助運動」の話題です。

概要

陸上競技では試技の直前、身体を温めたり動きを作ったりとは別の目的で身体を動かす選手を見かけることがあります。

特に短距離走ではスタート前に選手が2、3回トントンと跳ねてからセットに着く光景が見られます。

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リラックスやルーティンの一環でやっている(集中のため)など、目的は様々でしょう。

日本だけでなく海外でも見られる光景ですので、広く認知された動きであると考えられます。

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上記はちょっと極端な例ですが、スポーツをしていると「試技前にこの動きをすると、何だか動きやすい」という経験をすることがあると思います。

研究の内容

今回は論文ではなく研究のご紹介になります。

鹿屋体育大学の金高 宏文 先生の研究で、スプリント走における運動意識や運動動作を改善する補助運動である牽引歩行運動(PW)の即時的効果に関する研究です。

対象

大学スプリンター11名を対象としているようです。

このテの研究はパフォーマンスアップだけを目的とするのであれば非熟練者の方が結果が出やすいのですが、ここでは経験者を対象としています。

実験内容

コントロール群は設けず、全被験者に徒手抵抗での牽引歩行運動(PW)を実施させています。

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このPWは先行研究におけるスプリント中発揮される股関節トルクに関する知見を手掛かりに考案された運動で、下記2点を重視しています。

・股関節90-150度の範囲で、股関節トルクを発揮すること

・前足を支点とした足-重心の逆振り子の回転・伸縮運動とそれに同期した後脚・大腿の前方への引き出し

これだけ見ると実施時の注意点などまで読み解くことができませんが、同じく金高 先生の研究「中学生期におけるサッカー選手のトレーニング研究」においてPWと思われるトレーニング実施例が掲載されていました。

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距離は20mほどで、大腿前部の筋群を使わない意識が重要なようです。

結果 

PW後、11名中10名で「良い変化を感じた」との所感が得られたとのことです。

一方で実際の走りはどうかというと「ストライドが短縮し、ピッチが上がった」「ストライドが伸び、ピッチが下がった」「両方が増加した」被験者がそれぞれいたようです。

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最も多かったのは「ストライドが短縮し、ピッチが上がった」パターンで11名中7名。

いずれの変化も主に滞空時間の増減によるものだそうです。

これについては個人の運動意識や走りの特性の影響を受けたようだ、と考察されています。

まとめ 

・PWは即時的に既存のスプリントダッシュの運動意識を良い方向へ変化させる可能性がある

・PW後のピッチ・ストライドの変化は主に滞空時間の増減によるもの

・PWの動作特性などは研究段階

なぜピッチやストライドが変化したのか、動作は具体的にどのように改善されたのか等は研究段階のようです。

しかし、即時的に運動意識を良い方向に変化させる可能性がある点については大変魅力的です。

こういったトレーニングがどんどん世に出回ると良いですね。

 

今回はここまで。