どうも、森です。
今回は珍しく、ちょっと真面目な話です。
突然ですが皆さんはアシュトン・イートンをご存じでしょうか。
元・陸上十種競技の選手で、史上2人目の9000点の壁を突破した正真正銘の超人です。
特に短距離・跳躍種目を得意としており、混成競技の選手ながら100mのベストは10秒21、走幅跳8m23cm。
2015年の世界選手権では9045点の当時世界記録を樹立しますが、そのときの400mは驚異の45秒00。
その世界選手権の400m決勝7位の選手が45秒06ということからも、その超人ぶりが伺えます。
その後イートンは2016年リオ五輪のシーズンをもって引退。現在は世界記録もフランスのケビン・マイヤーに破られてしまいましたが、依然として十種競技における世界最高記録を4つ保持しています。
今回は2016年にNIKEのプレスリリースで公開された「アシュトン・イートンのエコシステム」から、イートンが自己記録を更新するために行なっていた10個のメソッドをご紹介します。
・競技1日目と2日目の間の睡眠時間は、最大でも5時間しかとれないため、前日に10~12時間の睡眠をとって寝だめする
・朝起きたらすぐに動き出せるように、イートンは夜寝る前にギア(シューズ、スエット、ユニフォーム、ビブス)を揃える
・競技の場所がそれぞれ異なるため、朝5時からの試合前に行うウォームアップはどこでもできるようにする。2012年のロンドン大会では、ロンドンの街中でウォームアップをした。2015年の北京ではホテルで、最近ニューヨークで行われた大会のウォームアップはダンススタジオで行った
・通常10種競技の選手は、競技の合間の時間、スタジアムの中の休憩エリアでくつろいだり、ビュッフェで食べたり、コーチと打ち合わせをしたりするが、イートンの場合は、横になって次の試合を頭に思い描く
・可能な限り、競技の間に冷たいシャワーを浴びて体温を下げてリフレッシュする
・フィールドでの暑さ対策として、イートンはナイキのクーリングフードをかぶる
・イートンは3~4分間のうちに眠りにつき、15分後に目をさますという、自分をフレッシュに保つための特技を身につけた
・集中力を維持するために、イートンはマラから学んだ競技のコツを小さい紙に書いてシューズの中に入れておき、試合の前に見直す
・イートンは1回目の投てきやジャンプで良い結果が出せた場合(10種競技では3回の試行が可能で、そのうち最高の得点だけが記録となります)、体力を保持するためにマラの指示で残りの2回をスキップする
・イートンとマラは、各競技を1つずつ明確に切り分けて取り組むことにしている。ウォームアップを競技の始まりとし、競技が終わると、すぐに気持ちを切り替える。この方法によってそれまでの試合内容が(良くても悪くても)次の競技に響くことを防ぐ
改めて感じるのは、世界のトップといえど「当たり前のことを、当たり前にやっている」ということです。
睡眠の大切さはもちろん、試合で使う道具は前日のうちに準備しておく。
学生の試合ですと、当日になってゼッケン用の安全ピンがないだとか、そもそもゼッケンやスパイクを忘れてしまった、というケースが散見されます。
そういった「潰せるミス」を事前に確実に潰し、競技にフォーカスする環境を自分で作っています。
試合前のウォーミングアップも同様で、規模の大きい大会や初めての会場では思うように場所を確保できないこともあります。
その中で、どれだけ引き出しの中から必要なウォーミングアップを選択できるのか。
以前何かの特集で、東京高校の大村先生が「どこでもウォーミングアップできる」ことが大切だということで、ホテルのロビーでウォーミングアップさせている光景が出たことを思い出しました。
また、取り組みの半分くらいは体力の温存、心身をフレッシュに保つためのものです。それだけ重要ということですね。
十種競技ほど種目数がなくとも、ラウンド制の試合はインターバルの過ごし方が、フィールド競技では試技間の過ごし方が勝敗を分けることも多々あります。
特にこれからの季節は気温が上がって動きやすくなりますが、身体を動かさなくても消耗するようになります。
強い選手はそのあたりのリカバリー、集中のスイッチの切り方も上手です。
大きな大会では競技動作だけでなく、そういった面も見て吸収したいですね。
今回はここまで。