どうも、森です
今回はちょっと思考整理的な内容です。
近年、ビジネスパーソン向けの本なのか「一流アスリートに学ぶマインドセット」的な本をよく見かけるようになりました。
明朗・前向きで忍耐強く、物事を諦めない姿勢はスポーツのみならず、ビジネスの成功にも通ずるところがありそうです。
果たしてこの「一流アスリートのマインドセット」は「作る」ことができるのでしょうか?今回はそんな話です。
「スポーツマン的」なマインドセットは作られる?
「これは淘汰の結果かもしれないね」
学生時代、研究室の先生が呟いた一言でした。
例えば中学・高校・大学それぞれの運動部を対象にアンケート調査を実施して「スポーツマン的性格」の度合いを抽出すると、概ね年齢が高くなるほどスポーツマン的性格の色が濃くなる傾向にあります。
しかし、このような傾向がみられる要因はザックリ2パターン考えられます。
・スポーツを通して「スポーツマン的」なマインドセットが強まった
・「スポーツマン的」なマインドセットの人だけが運動部に残った
私はてっきり前者だと思っていましたが、先生は後者ではないか?と指摘したわけです。
スポーツを通していわゆる「スポーツマン的」なマインドセットを育むという思想は昔からあって、例えば天理大学の研究「スポーツマン的性格について」では教育を通した情緒的・活動的・社会的な性格や態度の育成について言及しています。
「スポーツマン的性格について」 より引用
概ね明朗で積極性があり、忍耐力がある。そういったマインドセットが「スポーツを通して育成される」のか「淘汰の結果、統計的に見ればそういう風に見えてしまう」のか。
現時点では断言し難いので私見ですが「ある程度のレベルまでは育成可能で、それ以上は持って生まれたモノとの兼ね合いもある」と考えています。いわゆる輻輳説的な考えですね。
一流アスリートには「根拠のない自信」がある
一流アスリートを見て個人的にビックリしたのは「根拠のない自信」です。これに尽きます。
例えば何か勝負ごとがあったとして、普通の人は「最下位にはなりたくないな」「真ん中くらいに入れたらいいな」と思うでしょうし、ちょっと自信のある人は「一位になりたい」と思うはずです。
ですが「根拠のない自信」のある人は違います。一位以外をとることをまるで考えていません。
もしかすると負ける可能性も頭の隅にあるのかもしれませんが、こと勝負になると、そういった思考をシャットアウトしてするべきことにフォーカスできる。
400mハードル元日本記録保持者の苅部俊二 先生のインタビューでも、トップ選手の優れた部分として「根拠のない自身」について言及されています。
(前略)そういう人たちは"根拠のない自信"がありますよね。自信には「根拠のある自信」と「根拠のない自信」の2種類があると思ってるんです。
例えば、すごくたくさん練習をして「これだけ練習したんだから誰にも負けない」という自信は前者です。 それと同時に、理由はハッキリしないんだけど、「なんとなくやれる気がする」っていう自信というものもあって、みんなそういうのを持っていますね。
もちろん「努力してないか?」と言ったらそんなことはないんですけど、どこかしら楽観的というか、ハードな状況でも前向きになれるマインドがあるんです。 例えばケガをしたとしても、「とは言えオレ、絶対大丈夫!」なんて思えたりもするし、「絶対復活する」って心底思ってるんですよ。
みんながみんなそうではないんです。前にある選手と話したときに気づいたんですけど、なかには「頑張って頑張ってすごく頑張って、もし結果が出なかったら頑張ったぶんだけショックが大きいから、練習をあまり頑張りたくない」ってタイプの人もいて。
(中略)
でもね、僕自身はその気持ち、自分が現役の時まったくなかったんですよ。それを聞いて「なるほど。そういう考え方もあるんだな」と思ってしまったくらいで。五輪に出場するような選手たちには、「頑張って結果が出なかったらイヤだからやらない」という思考はたぶんないですね。
私は自分自身、割と楽天的な方だと思っていましたが「根拠のない自信」のある人はマジで後退のネジが外れています。
ああいったマインドセットを後天的に身に着ける方法は、今のところちょっと想像できません。
オプティミストだけでは社会や組織は成り立たない
では「根拠のない自信」がある人でなくては成功できないかというと、全くそうではありません。
現にポジティブ心理学の創始者の一人、マーティン・セリグマン氏は自著「オプティミストはなぜ成功するか」の中で「全員が将来の可能性ばかりを追求するオプティミスト(楽観主義者)だったら、会社は破産する」「成功している企業にはオプティミストもペシミスト(悲観主義者)も必要だ」と主張しています。
個人の短期的なパフォーマンスを見たとき「根拠のない自信」を持つオプティミストは成功の可能性が高そうですが、リスクを孕む選択には冷静さが必要です。
長期的には「オプティミストを理解できるペシミスト」「ペシミストの立場で考えられるオプティミスト」のような人物が大成する可能性もあるわけです。
今後はもしかすると「ペシミストのマインドセット」的な本が流行ったりするかもしれませんね。
今回はここまで。