【caution!】
本稿は私見が入った記事です。
どうも、森です。
夏が近いせいか、糖質を制限している人をチラホラ見かけるようになりました。
今回はスポーツをしている人に近年広まっている糖質制限の手法「Sleep Low(スリープロウ)」についての話題です。
概要
「Sleep Low」は、その名前の通り筋グリコーゲン濃度が低い状態で就寝する手法です。
近年広まった手法ですが「体重を落としつつスポーツのパフォーマンスを上げられる可能性がある」と捉えられ、一躍有名になりました。
関係論文・記事など
有名な研究は2016年の「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載された「Enhanced Endurance Performance by Periodization of Carbohydrate Intake: "Sleep Low" Strategy.」かと思います。
これを紹介したメディアとしては東洋経済オンラインがの記事が有名でしょう。
ザックリいうと、トライアスロンの選手に一定の条件で糖質制限をさせたところ、コントロール群に比べ3%模擬レースのタイムが向上したという内容です。
糖質制限の条件は「糖質の摂取総量はそのまま」「夜は糖質を摂らない」といったものです。
スリープロウを行う際の問題点
この研究の概要だけを抜き出すと、一般のアスリートでも取り入れられるように見えます。
しかし一般の、特に瞬発系アスリートがこれを取り入れる際には下記のような問題点が考えられます。
・実験と同様の条件設定が難しい
・「糖質の摂取総量はそのまま」を見落としがち
・研究は持久系アスリートが対象だった
当然ですが一般のアスリートの場合、運動による糖質消費に日常生活分がプラスされます。
したがって、実験群と同様の強度や条件設定が難しくなっています。
また、「糖質の摂取総量はそのまま」を見落とし「夜は糖質を摂らない」という部分だけを実行した場合、当然ながら栄養不足状態に陥ります。
例えば白飯150g(茶碗に小盛)で55g程の糖質だそうですが、筋肉量が多いアスリートの場合は平常時でこれを8〜9杯要する計算になります。
1日3食分に分けて食べる分には問題なさそうですが、これを朝・昼で摂取し切るとなると結構キツイ気がします。
もし摂取できたとしても、今度は他の摂取品目に影響を与えそうです。
最後に、ここで紹介されている研究は持久系アスリートが対象です。
持久系の運動は脂質をエネルギー源とすることができますが、瞬発系の運動には糖質を要します。
上記の要因が合わさり糖質が不足した結果、瞬発力が低下する…なんてコトも十分に考えられます。
自身の体験
私も昨年の夏頃、アキレス腱痛が悪化した際に「スリープロウ」での糖質制限を実施しました。
体重を減らしてアキレス腱の負担を緩和しようと考えたからです。
結果から言うと体重は10日で2kgほどスグに落ちたのですが、瞬発力が落ちました。
日常生活は全く問題無かったのですが、いざ全力で走り始めるとどうにも力が入りきりません。
恐らく糖質の総量が足りていなかったこともあると思いますが、大会本番も身体の中がスカスカした、フワフワした感じになってしまい100mで0.2秒くらいタイムを落としてしまいました。
まとめ
紹介事例が殆どなく申し訳ありませんが、個人的には瞬発系競技の選手に糖質制限はおすすめしません。
記事引用先の「アスリートにおける パフォーマンス向上につながる糖質摂取」でも次のような記載があります。
(前略)これらの情報のあくまでも一端が、一般消費者はもちろん、アスリートにも何かしらの形で伝わり、“適切か、そうでないかは別として”取り入れられているという現状があるのではないだろうか。
こういった背景が冒頭の「糖質オフ」「糖質制限」という言葉に置き換えられ、なんとなくまん延しているのかもしれない。
実際に、筆者も減量を目的としてこのような手法を応用することもあるが、「パフォーマンスの向上」という目的を達成させることを踏まえると、私見ではあるが感染症のリスクや、疲労の回復遅延といった観点から、現段階ではリスクの方が大きいと感じている。
従って、しつこいようではあるが、「パフォーマンスの向上」を目的としたアスリートは、いかに『適切に』『トレーニングや競技に応じた』そして自身が達成しようとしている「目的に応じた」糖質摂取を実現できるかが、大きなカギとなっている。
何かと目の敵にされがちな糖質ですが、パフォーマンスの向上には非常に重要な役割を果たしています。
特に瞬発系の競技者は上手に付き合っていきたいものですね。
今回はここまで。