向かい風参考記録

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ゼノンのパラドックスと疾走フォーム

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どうも、森です。

今回は珍しく陸上競技の話題。

「走るフォームの主観と客観のズレ」についてです。

亀と疾走フォーム

突然ですが、皆さんは「ゼノンのパラドックス」というものをご存じでしょうか。

「アキレスと亀」という名前でも知られる一種の詭弁です。

 

アキレスが前を行く亀を追ったとき、アキレスが亀の出発点に到達したときには亀はもう出発点にはいません。亀はもう少し先の地点まで移動しています。このときの亀の立ち位置を地点Aとします。

地点Aにアキレスが到着した時には、当然、亀はもう少し先の地点まで移動しています。このときの亀の立ち位置を地点Bとします。

地点Bにアキレスが到着した時には…といった具合に無限ループが発生。かくしてアキレスは永久に亀に追いつくことができない…といった内容です。

競技スポーツにおける「究極」

競技スポーツにおける技能というものも、この考え方に非常に似ています。

例えば、私が11月13日の23時00分00秒に今の心身のポテンシャルで持ちうる「最高の疾走フォーム」を会得したとしましょう。

しかし、心身の状況は23時00分00秒からコンマ1秒でも進んだ瞬間には微妙に変化しています。したがって1秒前に会得したフォームは「最高の疾走フォーム」の要件を満たせなくなります。

かくして競技者は「技能を極める」ことを至高の到達点としながらも、永久にその極地には到達できないわけです。

競技者とフォームの関係

上記の例は大げさに書きましたが、競技スポーツを志す者は「ある到達点」を目指しながらも、大なり小なり常に変化することを迫られます。

一方で、特にシーズン開幕直後のプロ野球などでは「フォームが定まらない」と不振にあえぐ選手が毎年のように特集されています。

つまり「ある程度変化させても良い部分・変化させていくべき部分」と「積み上げて定着させるべき幹の部分」を取捨選択しながら技能を高める必要があると考えられます。

厄介な「感覚のズレ」

ここで厄介となるのが「主観と客観のズレ」でしょう。どちらかというと、単発の運動を実施したときのズレというより、オフシーズンからシーズンイン、もしくはシーズン中のズレが厄介です。

時間経過で環境が変わる

当然ですが、冬と夏では環境が全く違います。気温などの外的要素もそうでしょうし、夏の方がスピード刺激への順応も進んでいます。

同じ感覚で動いたとしても、全く結果が違ってくるのではないでしょうか。

意識と至適範囲

例えば「膝を高く上げる」意識で走って、パフォーマンスが改善したとします。

では、この「膝を高く上げる」意識でトレーニングを続けるとどうなるのでしょう。恐らく、動作が「程良い」範囲から少しずつ逸脱してくると考えられます。

ひとつ良い感覚を掴むと「これだったのか!」と合点してしまいがちです。しかし、運動意識については常に少しずつ変えていく必要があるのではないでしょうか。

主観と客観のズレを修正するには…

感覚と実際の動きのギャップを埋めるには「客観的な評価」が必要と考えます。

第三者による評価なのか、定量化できるものなのか…奇抜な解決策はありませんが、いくつかの方法について検討してみましょう。

動きを撮影する

できれば同じ地点・ほぼ同じアングルからの撮影が望ましいです。より精度の高い個人内変動を見ることができます。

「視覚でのフィードバック」はフィードバックの中で最も有効であることがわかっています。また、映像から角度や接地時間についても客観的な評価が可能です。

第三者のアドバイスを求める

動きを見てもらって「どう思う?」という漠然とした質問より「こういう意識で動いているんだけれど、どうだろうか」と尋ねた方が適当かもしれません。

できれば同程度、もしくは少し上のレベルの人に見てもらうのが良いでしょう。

コントロールテストを実施する

パフォーマンス低下の要因が「フォームのずれ」ではなく、体力的な土台であるということは往々にしてあります。

体組成も定期的に見ておくのが望ましいです。意外と過体重が不調の原因ということもあり得ます。

技術的な意識をリセット

「どうにもズレが戻らない」のであれば、「戻す」より「イチから作り直す」方が結果的に良かったりします。

自分で考えながらやってしまうと、癖がぶり返しやすいです。教本でも読みながら「こう意識すべし」と書かれている部分をなぞっていくのがオススメです。

意識すべきポイントを外部化することで、リセット効果が期待できます。

まとめ

経験上、フォームの乱れは「フォームを直す」意識ではどうにもならないことが多いです。

フォームは結果です。フォームのズレ・乱れを感じた時は、変にひとつの運動感覚に固着していないか、筋力や体組成は適正か、チェックしてみてはいかがでしょう。

 

今回はここまで。