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スポーツをしている人が献血をしても身体能力に影響はないの?

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caution!

本記事は2018/9/17に投稿されたものをリライトしています。

皆さんは今まで「献血」をしたことはありますか?私の職場には日本赤十字社の献血バスが来ることもあり、今まで数回の献血経験があります。その都度400mlの全血献血を行うわけですが、毎回「こんなに採って身体能力に影響はないの?」と思ってしまいます。

今回は備忘録含めてスポーツをやっている人が献血をしても大丈夫なのか考えてみたいと思います。

概要

「献血」は読んで字の如く、輸血や血液製剤製造のために無償で血液を提供することをいいます。日本では輸血用血液は専ら献血により賄われており、関連事業は全て日本赤十字社が手がけています。

献血には「全血献血(200ml、400ml)」「成分献血」がありますが、血液の使い勝手などの面から健康体の男性であれば「400mlの全血献血」をお願いされることが多いと思います。一度これを行うと、男性であれば次回献血まで12週間(約3ヶ月)間隔を空ける必要があります。

ここで「12週間も空ける必要のある事をやってスポーツに影響はないの?」という疑問が生じるわけですが、日本赤十字社のサイトでは「献血当日は激しいスポーツは避けて下さい」と書かれているのみで、その辺りは明言されていません。

献血当日の過ごし方

乗り物を運転される場合は、その前に十分な休憩(30分以上)をおとりください。 ジュース(スポーツドリンク)、お茶などで十分に水分を補給してください。

トイレ:採血直後の排尿は座位で行ってください

エレベーター、階段:使用する際は特に注意してください

入浴:2時間以内の入浴と当日のサウナは避けてください

飲酒、喫煙:献血直後は避けてください

スポーツ:水泳、マラソンなど激しいスポーツは避けてください

重労働:採血側の腕には強い力がかからないようにお願いします

また、献血による身体能力の変化について扱った論文もザッとみた限りは見当たりませんでした。少なくとも身体能力が向上することはないと思いますので、献血のネガティブキャンペーンになるような論文はアレなんでしょうか。

輸血による血液成分の変化

まず、輸血による血液量が占める割合をザックリ計算してみます。

人間の血液の量は、体重の約13分の1と言われています。血液の量の12%を献血していただいても医学的には問題がなく、皆さまにお願いしております献血の量は安全なものですので、ご安心ください。

また、献血後の血液の「量」は、水分を摂取することにより短時間で回復します。

私の場合は70kg程ありますので全血液が約5.38L。400mlは約7.4%にあたる計算ですので、医学的には問題のないゾーンです。

ヘモグロビン濃度の計算

血液量は水分摂取で回復するそうですが、成分濃度はそうもいきません。今回は受付でヘモグロビン濃度を測定された際15g/dl」という数値が出ていましたので、これを使用します。

血液量がもとの量に回復することを想定して手元の数字を整理するとこのようになります。

  • 体内の血液量…5.38L=53.8dl
  • 体内のヘモグロビン量(?)15g*53.8dl=807g
  • 献血量…400ml=4dl(ヘモグロビン60g相当)
  • 献血後のヘモグロビン量…807g-60g=747g
  • 献血後のヘモグロビン濃度…747g÷53.8dl=13.88g/dl

諸説ありますが、ヘモグロビン正常値は概ね13.0g/dl〜16.6g/dl辺りです。したがって献血直後であっても日常生活や通常レベルでのスポーツをする分には問題ないと思われます。

血液成分が回復するまで

日本赤十字社のサイトによると概ね2〜3週間で血液成分は元どおりになるようです。

回復する速さには個人差がありますが、目安として、血漿成分は約2日、血小板成分が約4~5日、赤血球は約2~3週間で回復します。 

自身の体験から

「血液は約7.4%抜かれるものの通常レベルのスポーツは問題ない」というのが公式の見解ですが、私は大なり小なりスポーツに影響はあると思っています。個人差はあると思いますが、数日ほど以下のような影響を感じました。

  • 大きな出力をすると頭がクラクラする
  • セット間のリカバリーがしんどい

ウエイトを1発挙げるような運動にはさほど影響は無かったように感じます(ここも強度や個人差があると思いますが…)。コンディションは悪化するものの、血液を7%抜いても身体能力がそのまま7%落ちるわけではない…とは思います。

トレーニング負荷になる? 

コンディショニングという点ではあまり良くない気がしますが、血液成分を抜くことで擬似的に低酸素状態を作り出せるのでは?という意見もあります。

血液ドーピングの逆のような作用が出るわけですから一理あるといえばあるのですが、いかんせんエビデンスが中々見当たらないので何とも言えません。トレーニング内容にもよると思いますが、少なくとも私の場合は持久力が向上した実感はありませんでした。

まとめ 

  • 血液成分が元通りになるまで2-3週間必要
  • 持久系能力が一時的に落ちる
  • リカバリーには悪影響と思われる
  • 瞬発系の能力への影響は小さい気がする
  • トレーニング負荷としての効果は未知数

個人的な感覚の記述が多くなってしまいましたが、試合4週間前〜の献血は個人的にお勧めできません。とはいえ献血自体は社会的に意義のある活動です。健康な方は試合後や移行期にぜひ参加してみて下さい。

 

今回はここまで。

参考リンク

日本赤十字社