本稿は私見が含まれた記事です。
200m走は曲線120m、直線80mからなる競技です。
陸上競技をしている人以外はあまり走ったことがない距離かと思います。
今回はそんな200m走の話題です。
概要
一般的には100mと比べてややマイナー感のある200m走ですが、その歴史はたいへん古く古代オリピック黎明期の「スタディオン走」まで遡ると言われています。
当時のオリンピックにはこの種目しかなく、1スタディオン(約185m)の直線を最も速く走った者に、供物に点火する名誉が与えられたそうです。
ちなみにフライングした者には鞭打ちのペナルティが与えられたのだとか。
200m走に取り組むメリット
100m特化型の選手というのも居ますが、200mに取り組むことで100mにも良い相乗効果が期待できると言われています。
私見ですがこんな感じでしょうか。
・並んでスタートしないので、よりクローズドな状況で加速できる
・加速〜減速までの1つ1つの区間が100mより長いので意識しやすい
・いわゆる「大きな走り」を体得しやすい
また100mと200mのタイム差から、それぞれ加速や維持区間といった課題をチェックすることもできます。
単純に100mの倍ではない?
200mは加速から減速までの各区間が100mと比較して長くなっています。
では単純に各区間2倍として考えれば良いのでは?と思うわけですが、それがそうでもないようです。
2007年大阪世界選手権の100m走、2018年セイコーゴールデングランプリの200m走のデータがありましたので比較してみましょう。
100m走の速度変化
小さくて見辛いのですが、最高速度が50〜70m地点で出ていることが分かります。
もちろん、これは9秒台相当の選手のデータですので、本来はもう少し手前で最高速度が出現します。
200m走の速度変化
100m走の最高速度出現地点が50〜70mあたりということは、単純計算で100m以降の地点で最高速度を迎えることになります。
しかし、実際の最高速度到達地点は何と55-80m。100m走よりもやや後ろで出現していますが大きく変わらないことがわかりました。
このことから、200m走は単純に100m走の倍ではないことがわかります。
何が大切か
2018年の陸上競技研究紀要「2018 年トップアスリートにおける 200m 走パフォーマンス分析」では次のようなことが書かれています。
最高走速度は,男女共にフィニッシュタイムと有意な相関関係が認められた(p <0.01).
速度低下率は,男子においてフィニッシュタイムと有意な相関関係が認められたが(p < 0.05),女子においては認められなかった.
男子においては,最高走速度および速度低下率共にパフォーマンスと密接な関係があることが明らかになった.
最大疾走速度が重要というのは100m走と同様ですが、速度低下率(が低いということ)も重要そうです。
ここでの男女差は性差というより単純にタイム差から生じたものとも考えられます。女子選手相当のタイムであれば最大疾走速度がより重要ということでしょうか。
どういった意識・トレーニングが必要か
100mとの大きな違いは維持〜失速区間が長いということです。
55m〜80mで最高速度に達したとしても、残り100m以上は徐々に失速しながら走ることになります。
200m走のピッチ・ストライド変化ですが、ストライドは20m〜40m地点で最大となり最後までほぼ一定であることが分かっています。
したがって、200m走の失速の主な原因はピッチの低下と考えられます。
そういった点を鑑みると、できるだけ努力度を低くピッチを維持するようなトレーニングが有効ではないでしょうか。
・120m〜150mで力を使わずスピードを立ち上げる能力の強化
・250mでリズム良くエネルギー配分して走り切る能力
・300mで上記+ラスト30m程度を耐える能力
この辺りは効果があったと感じています。
450m走などはピッチが高まらないのか、個人的にはあまり効果を感じられませんでした。
また、レースでは水濠の辺りとコーナーを抜ける部分をチェックポイントにしていました。
まず水濠の辺りに向けてリズムを作っていくイメージです。これよりも手前でピッチが高まってしまうと後半持ちませんし、これ以降までダラダラ加速していくとコーナーを抜ける時にもうひと踏みができない感じがありました。
コーナーを抜けてからのラスト80mはここまでで作った加速・リズムの勝負なので、個人的に後半で何か意識を介入することはありませんでした。
まとめ
予想以上に長くなってしまったので、無理矢理まとめます。
・200m走の最高速度は概ね80mまでに出現する
・最高速度+速度低下(を抑える)ことが重要
・失速はピッチの低下により起こると考えらえる
「速い」選手を決めるのが100mなら「強い」選手を決めるのが200mといえます。
100m、400mとも相乗効果が期待できますので、 個人的には積極的にダブルエントリーしてもらいたい種目です。
今日はここまで。