【caution!】
本稿は私見が入った記事です。
ある程度陸上競技、とりわけ短距離走に関わっていると
「300m走万能説」のようなものに触れる機会があります。
合宿メニューに300m、ショートダッシュの〆にみんなで300m、
特に思いつかないからとりあえず300…
とにかく様々な場面で300mが出てきます。
主にキツイ練習のタイミングで。
なぜ300mがこれほど重宝されるのでしょう。
・テンポを維持できるギリギリの距離
・短短・短長の選手が一緒に練習できる
・練習した感がすごい
理由は探せばそれらしいものが無数に出てきます。
確かに、300mはスピードやテンポを持続できるギリギリの距離です。
また、耐乳酸の要素もある距離であり
スプリントに必要な要素が一通り詰まっているように思えます。
実際のところはどうなのでしょうか。
面白いレポートがありましたので引用させていただきます。
2 . 疾走速度逓減率と200m・300m・400m走のタイムとの関係
疾走速度逓減率と200m走のタイムとの間には、有意な相関関係はみられなかった。
しかし、300m走のタイムとの間には、男子学生(r=0.767,p<0.1)、
女子学生(r=0.954,p<0.0 5)ともに有意な正の相関関係がみられた。
また、400m走のタイムとの間には、女子学生にのみ有意な正の相関関係(r=0.902,p<0.1)がみられた。
このことから、100m走におけるスピード持続能力に関係している疾走距離は、300m以上の距離であると考えられる。
http://tsugaru.lets-sports.net/thesis/mikami-hisayuki.pdfより引用
「いきなり載せられてもサッパリわからん」
という方のために超ザックリ補足しますと
・200m走のタイムが良くても100m走の失速を抑える能力が高いかは不明
・300m走のタイムが良い人は100m走の失速を抑える能力も高い
という感じです。因果関係を示しているわけではありませんから
「300m走によって失速を抑える能力が培われる」とは断定できません。
また、このあたりの結果は被験者集団の競技レベルでも大きく変わってきます。
しかし、相関係数0.7から0.9というのはかなり高い数値です。
したがって、300mをトレーニングに取り入れることで
100m走の「失速を抑える能力」は向上しうると考えられます。
長い距離を走る意味がわからない、という選手もおりますが
たまには長い距離も必要ということでしょう。
ただ、これはあくまで300m走のタイムからみた能力の話です。
練習の〆に300mをやって半死半生になるのはどういった意味があるのでしょうか。
かの為末 大 氏は、冬季練習に関しての記事で次のようなことを書かれています。
私の感覚で言うと、比較的年齢の早い段階で、長い距離で感覚を掴ませるような事をした方がいい気がします。
(中略)
これはあんまり速く動くとよくわからないままごり押ししてしまう事になるため、ゆっくりのスピードで確かめながら走り、速く動く時は速く動くなどの割り切りを大事にした方がいいです。
(中略)
20代前半までに現役を終えようともしくは高校時代で終わりだと思っている選手は、なんぼでも走ったらいいと思います。
そして休憩時間を短くして、特に乳酸が出るようなじわっとした感じをより味わった方がいいでしょう。こういう練習にはピークを前倒ししてくれる効果があるように思います。
全く科学的根拠はないので体感での話ですが、1回動けなくなるほど疲労してからそこから更に追うような練習をすると短期間でかなりレベルを引き上げる気がします。
最後のあたりはサイヤ人かな?といった感じですが
高校生などがやっている「練習の〆の300m」はまさしくこれでしょう。
高校生活は3年間、陸上競技に限って言えば2年と少々しかありません。
短期間で強くなることを考えれば理に適っているのかもしれませんね。
ということで、300m走万能説はあながち間違いではないことがわかりました。
走る気になるかは全く別問題ですが。
今日はここまで。