文書や画像に文字を入れる場合、デザインに統一性を持たせることができて、かつ視認性の高いフォントが望ましいです。
広報やデザイン関係の方はご存じかと思いますが、今回はそんな有用性の高いフォント「UDフォント」をご紹介します。
UDフォントとは
私たちは情報の多くを視覚から得ています。そして、その視覚情報のほとんどは、文字によってもたらされていることは、もはや疑いのないことでしょう。雑誌や書籍、新聞、広報誌といった印刷物はもちろん、Webやメール、携帯電話ですら文字なくしては成り立ちません。
ひとたびどこかに行こうと思えば、案内板や交通標識、手元の切符にいたるまで、私たちはそこに記録された文字情報を頼りに行動をしています。文字は私たちの日常に、ごく当たり前のように浸透しているのです。
ではその文字が読みにくかったとしたら、わかりにくかったとしたらどうでしょうか。「300円」なのか、「800円」なのかわからない。濁点と半濁点の判別ができない。細い文字がかすれて読めない……文字の不明瞭さは、時として致命的なコミュニケーションの欠如を引き起こします。
このような事態を未然に防ぐためには、文字そのものがわかりやすく、読みやすく、読み間違えにくいことが求められます。つまり、誰がどんな状況であっても、正しく機能する「ユニバーサルデザイン」という発想が、文字のデザインにおいても求められているのです。
(株)モリサワ公式サイト より引用
UDフォントは可読性・視認性・判別性に優れ、誰もが読みやすく、見やすいデザインが施された書体です。UDフォントには幾つかの種類がありますが(株)モリサワのUDフォントシリーズはWindows10のOfficeソフトにプリセットされ、様々なシーンで使われています。
UDフォントの特徴
UDフォントは形がわかりやすいように、文字の中の空間を広くとったり、濁点を大きくしたりしていることが特徴です。試しにUD・非UDのフォントを同じサイズで指定して並べると、歴然とした差があります。
▲UDは大きめでハッキリ濃い印象
また、UDフォントは弱視の方でも読みやすいよう「す」などのループが大きくなっています。このことから滲みにも耐性があり、モニター上の表示と紙に印刷された実物のギャップが少ないフォントであるといえます。
▲滲みに強いため、数字の間違いを減らせるメリットも
発達障害・学習障害にも対応
Windowsにプリセットされている「UDデジタル教科書体」は近年、急速に教育現場で普及しています。UD教科書体には数種類のバリエーションがありますが、UDフォント特有のスッキリした印象はそのままに、少し丸っこい印象があります。
これは、文字の先端が尖っているとストレスを感じることもある発達障害の児童生徒への配慮だそうです。他のUDフォントと比較しても、はらいやはねの先端が丸められています。
こうして見ると些細な違いのように思えますが、識字障害(ディスレクシア)の子が文章を読めるようになるなど確かなエビデンスがあるそうです。
今日、訪問した支援者の方から「UDデジタル教科書体」に変えたら、今まで文字を読めなかった子が「これなら読める!オレはバカじゃなかったんだ……」と言って、皆で泣いてしまったという話を聞いた。
— Yumi Takata (@Yumit_419) April 3, 2019
その話を聞いて、書体が手助け出来たことの嬉しさよりも、その子が今まで背負ってきた辛さ、…(続
また、識字障害を持たない児童にもUDフォントの有効性は実証されています。奈良県生駒市教育委員会の調査では、一般的な教科書体で66%だった正答率がUDフォントでは81%に跳ね上がったそうです。
MacでもUDフォントを
MacintoshにはUDフォントはプリセットされていませんが、何と(株)モリサワのサービスでゴシックと明朝体を無料でインストールできます。
ゴシックはタイトルや見出し、明朝体は読ませる文章に用いると効果的なフォントです。当然Windowsとも互換性がありますので、インストールすることをお勧めします。
フォントに「P」が付くと何が違うの?
これはUDフォントに限った話ではありませんが、UDフォントにも「UDP」という名前のものがあります。この「P」は「プロポーショナル」の略です。特に拘りがない限りは「P」の付いた方を使うと自然で綺麗な仕上がりになることが多いです。
まとめ
- UDフォントは可読性・視認性・判別性に優れる
- UDフォントは健常者にとっても有用
- 美観を損ねず使用することができる
モリサワのUDフォントの優れた点は「洗練されている」ということでしょう。「万人向け」として優れていても「ダサい」ものは使いくいです。しかし、モリサワのUDフォントは元のフォントの特徴や美しさを損なうことなく昇華しています。
また、日本語のフォントというのは開発が非常に大変です。英語がアルファベットで済むのに対し「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と膨大な種類を用意しなくてはなりません。このため、一見して美しい見た目のフォントであっても、非対応の文字が多く実用的でないケースも多々あります。その点から見てもモリサワのUDフォントは対応字数が多く、非常に優れています。
個人的にはUDの明朝体がお気に入りです。皆さんも一度、非UDで作った明朝体の文章を置き換えてみると読みやすさに驚くと思います。
今回はここまで。