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短距離選手(スプリンター)の有酸素トレーニング例を紹介してみる

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

瞬発・パワー系のトレーニングが主体の短距離選手も、毎日高強度のトレーニングを繰り返すわけにはいきません。中には定期的に有酸素運動を取り入れている選手もいますが、内容は個々人でかなり差があるように思えます。

今回は短距離選手の有酸素トレーニングの例をご紹介したいと思います。

概要

「短距離選手に有酸素運動は必要なのか」という話題は、しばしば議論を呼んできました。「有酸素運動」の定義や量が前提条件として設定されていないと議論がこじれがちですが、個人的には短距離選手にも最低限の有酸素能力は必要であると考えています。

100mを1本全力疾走するのに中長距離を走り切るような有酸素能力は必要ありませんが、疾走能力を高めるための日々のトレーニングには有酸素能力が必要だからです。

中には「速筋が遅筋化するのでは?」「カタボリック(筋肉の分解)を招くのでは?」との意見もあります。ですが、短距離選手が有酸素トレーニングをする場合はスプリントトレーニングやウエイトトレーニングより優先順位が低く、どうしても片手間になるはずです。

そのような中で筋質が変化したり、目に見えて筋肉が削られるほどのレベルの有酸素トレーニングが実施できるでしょうか。十分な休養・栄養と尋常なトレーニングの範囲内であれば、特に心配せずとも問題ないと思っています。  

資料紹介

先日ご紹介した「スポーツ活動における陸上競技の効果的指導法に関する一考察」の別章「試合に直結したスプリンターの基礎体力について 冬期鍛錬期の目的・方法」内に短距離選手が有酸素運動に取り組む必要性やメニュー例が記されています。

有酸素運動の必要性 

有酸素運動のトレーニングを行い、回復力を高めると、いかなる条件下でのレースでも力を発揮することが出来る。

・回復力が高ければ負荷の強い練習もこなすことが出来る。

・負荷の強いトレーニングにも耐えることができる。

・怪我、故障も少なくなる。

先ほども触れましたが、短距離選手の有酸素トレーニングは直接的な競技力向上、というよりも「トレーニングのためのトレーニング」という位置付けです。

回復力が高まれば余裕を持ってラウンド制の試合をこなしていくこともできるでしょうし、その余裕に伴い怪我や故障リスクを下げることができる可能性があります。

トレーニング例ついて

この資料内では「2分間走」が主なトレーニング例として紹介されています。設定は「精神的に負担を感じない距離と時間」ということで以下のようになっています。

・距離→600m〜650m(上級者 男子700m以上、女子600m以上)

・時間→2分間 休息2分間

このトレーニングは「テンポ持久力」なるものを養成するものだそうで「一般持久力」を養成するトレーニングとしては30分程度のジョグが例として紹介されています。

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「精神的に負担を感じない距離と時間」と言いつつ、700mを2分レストで8本は正直普通にキツいと思います。スプリントトレーニングと並行して消化できれば一冬で化けられそうなトレーニングですね。 

まとめ 

・短距離選手にも有酸素能力は必要

・有酸素トレーニングは精神的に負担を感じない設定が良さそう

ご紹介した有酸素トレーニングより優しい強度設定にしたい場合、最大心拍数の60〜65%未満ほどを目安にすると良いと思います。

最大心拍数は220-年齢で算出しますので、20歳なら200×0.6=120拍/分ほどです。これは長距離界隈で「回復ジョグ」と呼ばれるくらいのペース設定で、これ以上ペースが上がると疲労が蓄積する可能性もあります。 

中高生であれば「駅伝」という形で短距離選手も長距離のトレーニングを行うことがあるかもしれません。有酸素能力をグッと引き上げるチャンスなので、ぜひ手抜きせずに本選出場を目指してみてください。

 

今回はここまで。