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白亜紀から昭和の末期までカバーする「羽幌町郷土資料館」がヤバかった

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先ず最初に皆で仮小屋を作ったが、木はどこにでもあり、持ってきた短い鎌で笹を切り2戸の粗雑なものが出来あがった。

未開の地に最初の眠りについたが、郷里のことがちらついたり、これからの作業などを考えたりして、まるまる眠れなかった。

キャプション「開拓小屋をしのぶ」 より引用

明治時代の初期、官庁に北海道開拓使が置かれ、北海道各地で開拓の機運が高まりました。

当時まさしく「未開の地」であった北海道に一旗あげようとやってきたのは、家督相続から外れた次男三男たち。

今回は道北の町・羽幌町の開拓の歴史から石炭鉱業の盛衰までを展示した「羽幌町郷土資料館」を訪ねてみました。

概要

「羽幌町郷土資料館」は、その名前の通り羽幌町に所在します。

昭和57(1982)年に築別中学校跡を利用して開館したようですが「市街地から遠い」との理由で平成元(1989)年に簡易裁判所庁舎跡に移転。今に至るようです。 

以前記事にしました羽幌炭鉱の順路のスタートでもあります。

アクセス・営業時間など 

営業時間:10:00〜16:00

定休日:月曜日(11月〜4月は閉館)

入場料:大人210円、高校生以下無料

札幌から車で3時間弱、旭川からでも2時間。羽幌には鉄道駅もありません。

バスは出ているとのことですが、郷土資料館単体を見にバスに乗るのも正直どうかと思います。

車で行くか、公共の交通機関を使うなら輪行できる自転車を持っていくのが良いかと思います。 

所要時間

建物自体さほど広くはありませんので、じっくり見ても1時間もかかりません。

今回は炭鉱を見て回る順路の1番目ということで30分ほどで見て回りました。

館内を散策してみる

資料館の展示内容はかなり雑多で、主に化石、開拓、漁業、石炭鉱業の4つを扱っています。

館内を見て回ってザックリ羽幌の歴史を列記するとこんな感じになります。

・〜6500万年くらい前(白亜紀)恐竜が生活していた

(恐らく白亜紀あたりに絶滅した)

・江戸時代 砂金が採れた?

・明治19(1886)年 鰊(ニシン)漁、捕鯨が始まる

・明治20(1887)年 開拓が始まる

・明治27(1894)年 羽幌村が成立(役場設置は3年後)

・明治34(1901)年 捕鯨廃止

・昭和14(1939)年 炭鉱開発開始

・昭和29(1952)年 鰊が凶漁

・昭和33(1958)年 鰊が全く獲れなくなる

・昭和45(1970)年 炭鉱が閉山

鰊漁の盛り上がりと共に未開の原野が開拓され、およそ5年で120戸、更に4年後には400戸が入植したとあります。

その後鰊漁は盛り上がりを見せ、各地に「鰊御殿」と呼ばれる網元の豪邸が建ったのだとか。

この建物のいくつかは現存しており、文化財指定を受けています。

終戦後の町の活況に陰りが見え始めたのは1950年代の後半。鰊が全く獲れなくなってしまいます。年表にも「凶漁最高に達し皆無となる」と書かれていました。「皆無」というからには全く獲れなくなったのでしょう。

その後、盛り上がりを見せていた炭鉱も1970年に閉山してしまいました。

アンモナイトの化石

アンモナイトの化石以外にも展示されているのですが、とにかく豊富に展示されているアンモナイトの化石が最大勢力です。

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▲階段にまでアンモナイトが侵蝕している

もちろん化石なので原寸大なんですが、アンモナイトってこんなデカいんですね。こんなのと海で遭ったら恐怖しかないです。

調べてみると今見つかっているもので最大2mくらいあるのだとか。

しかも貝類っぽい見た目のくせにゴリゴリの肉食だったそうな。現代も生きていたら人間も襲われていた可能性大。

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▲マジでデカい

肝心のアンモナイト以外の化石ですが、こんなのばかりでした。

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▲イルカの化石

これをイルカと言い切る胆力よ。

「工事現場からパクってきた基礎の破片です」って説明されても信じるぞ。

いや、わかりますよ。

たぶんイルカの身体の一部とかなんでしょうけど、もっとこう「イルカの歯」とか「頭蓋の一部」とか補足があって然るべきでしょうに。

昔の暮らしや開拓

寄贈を受けた昔の道具などが所狭しと並んでいます。

中々価値のあるものも多そうなんですが、いかんせん建物がちょっと手狭ですね。

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▲明治〜昭和中期くらいのもの?多数

開拓小屋を再現した展示もありました。

リアル「3匹の子豚」のワラの家です。

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▲これで生活していたのは凄い

キャプションには「未開の地に最初の眠りについたが、郷里のことがちらついたり、これからの作業などを考えたりして、まるまる眠れなかった」と書いてありましたがそりゃそうでしょ。未開の原野でこんなワラ小屋で眠れないって。

しかも生活しつつ開拓もしなくてはいけない。先人の苦労がありありと伝わってきました。

漁業・石炭鉱業

当時の写真や使っていた道具が展示されています。

鰊は春の魚ということで、当時は他の地方からも「ヤン衆」と呼ばれる出稼ぎ漁師が大勢やってきたのだとか。

ちょっとビックリしたのが鰊漁の船。ちょっと大きめのカヌーにしか見えませんでした。たぶん当時は死人が出たのではないかと思います。

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▲肝心の船の写真を取り損ねた

羽幌炭鉱の鉱員の装備なども色々ありましたが、たぶん当時は今より鉱山での仕事はずっと危険だったはずです。それなりに事故もあったのだろうと思います。

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▲タンちゃんという安直なネーミング

先人の苦労・産業の盛衰

古代の生き物、開拓の苦難、産業の盛衰。

歴史年表にまとめてしまうと紙1枚ですが、そこには人々が作ってきたドラマがあります。 

財政的な理由で何かと公共事業は縮小されがちな昨今ですが、こういったローカルな資料館は今後も存続して欲しいですね。

 

今回はここまで。