「積丹ブルー」の名の通り、美しい青色の海が有名な積丹半島。
今でこそ景勝地として名高いこの地も、かつては海上交通の難所として知られていたそうです。
今回はその名残をとどめる霊場「西の河原」を訪ねてみました。
概要
「西の河原」は神恵内村のジュウボウ岬に存在する霊場です。
仔細な情報は少ないのですがその歴史は古く、北海道が「蝦夷地」だった頃から存在していたと考えられます。
かの松浦武四郎が記した「蝦夷日誌」の中でもこの地について言及されています。
西院川原(賽ノ河原)
多くの石を積み上げたり。此処より上宮に又道有き鳥居を越えて上るなり。
現在は慰霊のための地蔵堂が建っていますが、それ以前から何か特別な意味をもつ霊場であったと思われます。
群馬県の草津温泉にも同名の温泉がありますが、直接の関係は無さそうですね。
アクセス・営業時間など
かつては船でしか行くことのできない秘境だったようですが、現在は海岸線を伝って徒歩でのアクセスが可能です。
営業時間:なし
定休日:なし
入場料:なし
札幌からは高速を使えば2時間、小樽からは1時間とアクセス自体はそこそこ。
西の河原トンネルと大天狗トンネルの間に広い駐車場があり、釣り人などの利用があるようです。
北海道内には「カムイコタン」をはじめ「カムイ=神」の名前を冠する場所がありますが、この地も「カムイミンタラ(神々が遊びしところ)」と呼ばれているそうな。
こう書くと何だか神秘的な感じがしますが、ぶっちゃけカムイ=神=熊なので「熊が出没する地域」ということです。
他にもマムシが出るそうなので、最低限アウトドア用の装備はしていった方が良いと思います。
所要時間
駐車場から目的地が近いため、健脚なら片道30分少々といったところでしょうか。
今回は写真を撮ったり寄り道をしたため、往復で3時間を要しました。
周辺を散策してみる
駐車場から海岸沿いまで出ます。草の背も低いので、藪漕ぎも必要ありませんでした。
市街地から完全に隔離された場所にありますが、地蔵堂を訪れる人のためかバス停があります。
▲1日2本。時間的にも釣り人用というより巡礼用か
地面はコブシ大の石が密集しています。
探訪の際はスニーカーではなくトレッキングシューズをお勧めします。
▲ここをずっと歩いていく
岩場に到着
しばらく歩くと、コブシ大の石が次第にゴツゴツした岩場に。
次第に道が険しくなってきます。
▲この時は引き潮の時間帯
潮が引けていれば、岩の間に浅い水場が幾つもできています。
今回はちょっとこの辺で寄り道して遊びました。
▲水が恐ろしく綺麗
▲流れ自体はけっこう速いので注意
途中、ロープの下がった岩場があります。
特に何かを祀っているポイントというわけではないようですが、ビューポイントの一つです。
▲ロープは2本あるが、どちらも岩にかけてあるだけ
頂上からは「西の河原」が見えます。
▲奥に見える小屋のような建物が地蔵尊
岩場を超えて「西の河原」へ
岩場地帯を超えていきます。
難所というほどではありませんが、整備された道ではありません。できれば複数人で行動した方が良いかと思います。
▲岩もちょっと変わった質のものが多い気が
ほどなくすると目的地「西の河原」に到着します。
▲岩場地帯を過ぎればもう目的地
左手にはかつて整備されていた遊歩道の跡が見えます。
2001年ごろから手付かずのようで、既に自然に還りつつあります。
▲引きで見ると結構な規模であったことがわかる
「西の河原」到着
遊歩道の跡地を過ぎれば、ハマナスの群生地帯に入ります。
地蔵尊管理者の手入れなのかこの地帯の植生なのか、草の背が低いので歩きやすくなっていました。
▲花のシーズンが過ぎていたのでハマナスは実だけ
▲仏教的にありがたそうな形の植物
所々に賽の河原よろしく積み石が散見されます。
慰霊、海難防止の願いのこもった積み石です。
▲結構な量の積み石があちこちに
地蔵尊には「霊場 賽の河原」の文字が。
バス停や地名は「西の河原」表記なのでここだけ差がありますね。
▲地蔵尊に併設されたマニ車
地蔵堂の横に併設されたジターリングのような物体は「マニ車」というチベットの仏具で、これを回転させると読経と同じ功徳があるそうです。
▲スケール感がおかしくなってきそう
海流の関係か、入り江部分には様々な漂着物が流れ着いています。
美しい海と独特の雰囲気の地蔵堂、積み石、漂着したガラクタ。何とも退廃的な雰囲気です。
▲流木からガラクタまで大小様々
向かいのジュウボウ岬には人口の水抜き穴があったり、護岸整備の跡らしきものが見られました。
▲水抜き穴?
▲明らかに人の手が加わった跡
金属のフックのようなものも埋設されていました。
もしかすると、この入り江は過去に船着場として機能していたのでしょうか。
…とはいえ船着場としては水深が浅すぎる気がしますし、謎です。
▲水深そのものは見てのとおり浅い
幽玄な空気感の場所
ブルーの美しい海、切り立った奇岩の数々、異様な雰囲気の積み石たち。
有名な物語「西遊記」やヴィレッジ・ピープルの楽曲「GO WEST」でも西を目指したように、日が没する西には昔から何か特別な意味が込められていたのでしょう。
まさに地の果て・西の河原といった様相の場所でした。
厳しい自然と向き合った、先人の軌跡の一端を垣間見た気がします。
今回はここまで。