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トレーニング中の独り言がパフォーマンスを上げる?セルフトーク(自己教示法)の有用性について

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caution!

本稿は私見が含まれた記事です。

バスケットボールのフリースローや陸上競技のスタート、跳躍の直前といった集中力の要るシーンで選手が一言二言何か呟いて試技に入ることがあります。

これは「セルフトーク」といって、メンタルトレーニングの代表的な技法のひとつです。

今回はこのセルフトークについての話題です。 

概要

セルフトークはその名前の通り、自らの言葉で自分自身に教示を与えることにより、それが刺激となって自分の行動を変容させる方法です。 

実際に声に出して言い聞かせたり、心の中で内言として言い聞かせる方法があります。

スポーツへの応用は主に「スポーツ心理学」の分野で研究されていますが、そこではセルフトークは以下の2種類に大別されています。 

・動機付け(モチベーション)に関するセルフトーク

・動作の感覚や技術的に関する教示的なセルフトーク

前者は「最大限頑張ろう」だとか「今日は調子が良いから大丈夫」といった具合で、後者は「ここの角度を少し上げる」「動き出しは大きくゆっくり」といった感じでしょうか。

スラムダンクで有名な「左手は添えるだけ」といった台詞は典型的な後者のセルフトークといえます。 

手法に優劣はあるのか

動機付けセルフトーク、教示的セルフトークの間に絶対的な優劣はなく、それぞれがスポーツのパフォーマンスにおいて異なる効果をもつことが実証されています。

多くの実験では、どちらのセルフトークも課題に対する集中力を高め、パフォーマンス向上に寄与するといった結果が出ています。

ただし大まかな傾向としては、正確さが求められる課題に対しては教示的なセルフトークが有効なようです。 

論文の内容

陸上競技者を対象とした研究ではありませんが「セルフトークが運動パフォーマンスに及ぼす影響」というズバリなタイトルの研究をご紹介したいと思います。

対象

水泳部に所属する中学・高校生24名が被験者です。

セルフトークは声に出す・出さない問わず「言葉」が重要ですので、語彙力が未発達の年齢の競技者では被験者として適当ではないのかもしれませんね。 

実験内容

クロール泳法による400mのタイム計測を実施し、1週間後に2度目の計測を行なっています。

1度目の計測結果をもとに統制群とセルフトークを実施する群(ST群)を分け、2度目の測定前に介入が行われています。

ST 群の参加者に対 して教示シートを配布し,STの使用について説明した.

具体的には,測定中は提示された3種類のST(「からだが軽い・よく動く」,「調子がいい」,「よく進んでいる」)を順番や頻度にこだわらずに,頭の中で唱えながら泳ぎ続けることを教示した.

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この実験のセルフトークはやや動機付け寄りに見えますが、感覚的な内容もありますのでちょっとファジーです。

個々人で技術的な課題は異なりますので、技術的な教示内容はこういった実験には不向きかもしれませんね。

タイム計測後、運動強度・疲労度・不安尺度・抑うつ尺度をそれぞれ測定しています。

結果 

ST群のタイムが良く、心配・不安といった感情も逓減する傾向がみられました。

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タイムについては全力で泳ぐことを指示していなかったようなので何ともいえませんが、下記の通り考察されています。

ST 群,統制群ともに,2回の測定を同じペースで泳ぐように教示されており,結果としても,2回の測定における主観的運動強度および疲労度に変化は見られなかったことから,いずれの群も2回の測定を同じペースで泳ごうと意識していたと判断される.

しかしながら,ST群のみにパフォーマンスの変化が見られた本研究の結果は,自身について肯定的に述べる言葉によって,実験参加者の意図によらず身体の運動が亢進される可能性を示唆している.

さらに,一般的な見方としては,身体的な運動が大きく亢進すれば,それに伴って運動強度や疲労度の知覚は高まることが予想される.しかしながら,本研究の結果はそれに反し,運動の亢進に伴った強度および疲労度の知覚の増加は見られなかった.

増加するはずであるこれらの知覚が増加しなかったという結果は,すなわち緩和されたとも考えられ,自己肯定的なSTによってその効果がもたらされた可能性がある.

うーん、全力のトライアル結果がどうなるかはわかりませんが…といった感じですね。

相対的に疲労度が小さいというのであれば、トレーニングの現場でも応用できるかもしれません。

まとめ 

・セルフトークはスポーツパフォーマンスを向上させる可能性がある

・動機付け・教示的な手法の間に絶対的な優劣はない

重ね重ね申し上げていますが、スポーツのパフォーマンスというものは様々な要因によって簡単に変わってきます。

もちろん、そういった個々のステータスのブレを補正するために集団で実験を行い統計的な手法を用いるわけですが、それでも100%完全に条件をコントロールし切るのは難しいでしょう。

セルフトーク自体は概ね有効だとは思いますが、あまり1度に意識する内容を詰め込みすぎるとパフォーマンスの妨げになる可能性があります。

また、技術的な内容のセルフトークは習熟した技術の妨げになるという説もあります。

集中力のいる場面では1つに絞る、練習で動きを修正するときは2〜3独り言をいいながら動くのが良いかもしれません。

 

今回はここまで。