どうも、森です。
今回はちょっとケア・リカバリー系の話題です。
競技スポーツにおいてパフォーマンスを高めるためには、トレーニングと同じくらい、もしくはそれ以上にケアやリカバリーが重要といえます。
世の中には様々なリカバリー法が存在しますが、今回は「熱めの風呂に入るだけ」という比較的手軽なリカバリー法をご紹介します。
概要
身体に熱などのストレスが加わった時、そのストレスから身体を防御しようと特殊なタンパク質が作られます。これをHSP70(ヒート・ショック・プロテイン)といいます。
このタンパク質は身体に対するあらゆるストレスにも対応し、傷ついた細胞を修復してくれる働きを持っているそうです。
日本における研究ではHSP研究所の伊藤 要子 先生が有名なようですが、氏によるとヒートショックプロテインを増大させると以下のような効果があるのだとか。
・免疫機能の向上
・血流が良くなる
・乳酸の産生が遅れる
・体温が上がり体脂肪が低下する
・エンドルフィンの誘導(疼痛の緩和)
・老化の防止
「乳酸はエネルギー源」という説がある中でこの書き方も正直どうかと思いますが、運動能力向上、筋肉痛の予防になるという主張のようです。
論文の内容
ざっと見た限りでは、国内では先にご紹介した伊藤先生の研究が多いようです。スポーツの専門家による仔細な分析はまだ途上といったところでしょうか。
「全身加温による運動能力の向上 : 温熱療法により誘導されるHSP 70を利用した温熱トレーニング」では、加温2〜4日後にHSP70が最高になるという性質を利用し、加温2日後にトレッドミルでの運動能力を評価しています。
加温群と非加温群の比較では、加温群全員の走行時間が延長したと報告されています。
また、スポーツ刺激そのものもストレスとしてHSP70を増加させるとしており、伊藤先生はスポーツと入浴の組み合わせも有効であると主張しています。
有効な加温方法(入浴方法)
とりあえずHSP70は熱ストレスさえあればOKなのですが、手っ取り早いのはやはり入浴のようです。
伊藤先生が公表されている「HSP入浴法」は下記のとおり。
1.バスタオルと着替えは、すぐ手の届くところに置く
2.浴槽のふたを開けたり、床や壁にシャワーをかけ浴室内を温める
3.手、足、体(心臓に遠いところから)に、かけ湯をする
4.浴槽には、足から手、体の順にゆっくりと浸かる
5.湯に浸かりながら舌下で体温を計る。38℃まで上がるのが理想。
※お湯の温度目安/42℃→入浴10分、41℃→15分、40℃→20分
※血行促進作用のある入浴剤を使用の場合は、40℃→15分
6.入浴後は「10分~15分」保温する
※HSP入浴法で一番大切なところが、最後の保温時間です。
体温を37℃以上に保つことで、体内のHSPが増えるので、体の水分はしっかりふき取り、体が冷えないよう衣類を身に着け、 冬は暖かい部屋で、夏は冷房をかけずに最低10分間、体を保温します。
水分補給には、冷たいドリンクを避け、常温、もしくは温かい飲み物で補います。冷たいドリンクは保温後に飲みましょう。
ヒートショックプロテイン入浴法 より引用
「湯につかりながら舌下温を測る」のはちょっと実用的ではありませんが、 40度で20分、42度で10分の入浴が目安なのだとか。
ちょっと高めの温度ということを考えると割とガッツリ目の入浴ですね。
ちなみに「42度で5分」のような短時間の入浴ではHSP70は増加しなかったようです。
まとめ
「同一の研究者が論文を出しまくっている」というのは正直…という感じですが笑
今回のまとめです。
・入浴によりHSP70の増加が期待される
・40度で20分、42度で10分の入浴が目安
・HSP70は入浴2日後がピーク
HSP70の増加は2日後がピーク…ということは「疲労が残るから試合前日はシャワーのみ」という選手でもこの入浴法は活用できます。
このHSP入浴法は毎日続けなくても良いそうですが、低体温の人は最初1週間(1日おきなら10日〜2週間)続けて実施すると基礎体温が改善するそうです。
伊藤先生はスポーツの専門家ではありませんので、個人的には今後スポーツ専門の見地からの研究を期待しています。
今回はここまで。
【参考リンク】
全身加温による運動能力の向上 : 温熱療法により誘導されるHSP 70を利用した温熱トレーニング
https://www.yakult.co.jp/healthist/219/img/pdf/p20_23.pdf