向かい風参考記録

陸上競技 その他 いろいろ

短距離走が速くなる筋トレは存在するのか

f:id:Wetland:20190620215210j:plain 

 【caution!】

本稿は私見が入った記事です。

 

どうも、森です。

ストレングストレーニングには、基礎体力を全面的に向上させることを目的とする「一般的なトレーニングエクササイズ」と、専門とするスポーツのパフォーマンス向上を狙った「専門的なトレーニングエクササイズ」の2つがあります。

今回は短距離走に有効な、後者についての話題です。

概要

短距離走の疾走動作は大きく「スイング期」「キック期」の2つに分けられます。

前者は離地した足が再び接地するまでの期間、後者は接地してから離地するまでの期間です。この間、特に下肢の筋は目まぐるしく伸張と収縮を繰り返しています。 

この疾走中の動作や筋活動の様式などを踏まえ、それに近い筋活動や収縮を再現できれば、短距離選手にとって専門的・特異的なトレーニングとして活用できる可能性があります。

関係論文・記事など

今回は大阪体育大学の研究「短距離走選手のための機能的なトレーニングエクササイズ」を引用させていただきます。

この研究は下記6種類のトレーニング・エクササイズを実施し、最高速度で疾走中の筋活動・収縮様式と比較しています。

f:id:Wetland:20190620223440p:plain

f:id:Wetland:20190620223441p:plain

 短距離走選手のための機能的なトレーニングエクササイズ より引用

結果・考察を要約するとこんな感じになります。

  • ①および②は期前半の「もも上げ動作」を反映した腸腰筋のためのトレーニングとして利用できる
  • ③はキック期からスイング期に移行する局面における腸腰筋のトレーニングとして利用できると考えられる
  • ⑥はスイング期中盤から後半における大腿二頭筋に対するトレーニングとして利用することができると考えられる
  • ④および⑤は大殿筋と大腿二頭筋はともに短縮性の筋活動が見られ股関節が伸展した。さらに⑤は腸腰筋の伸張性筋活動が見られた

特に⑤については「疾走中におけるキック期の動作および筋活動様式を反映しており、短距離選手のために最も特異的なトレー ニングになり得る」と考察されています。

⑤kick-con を実施してみよう

ペアで実施する必要がありますが、方法は至ってシンプルです。 

1.台上に腹臥位(うつ伏せ)をとり、トレーニングする側の股関節は屈曲した姿勢で動作を開始する

f:id:Wetland:20190620225337p:plain

2.トレーニング側の股関節を伸展するように力を発揮するが、パートナーはそれに抗するように負荷をかける

f:id:Wetland:20190620225345p:plain

f:id:Wetland:20190620225347p:plain

3.もとの姿勢に戻る

f:id:Wetland:20190620225531p:plain

f:id:Wetland:20190620225533p:plain

レッグカールと違うのは、膝屈曲ではなく股関節伸展であるということです。

f:id:Wetland:20190620225819g:plain

047 レッグカール・アニメーション より引用

パートナーの負荷のかけ方など多少の慣れは必要かと思いますが、なかなか通常のトレーニングでは強化できない動作です。

自身の体験

こういったトレーニングは、通常の筋トレやダッシュに組み合わせて実施するとより効果的です。

「走る前に実施して、使う部分をしっかり意識してから走練習に移る」という人もいれば「筋トレ後に実施して筋肉に動きを覚えさせる」という人もいます。

個人的にはウエイトの種目間にこういったエクササイズを実施すると調子が上がる感じがします。締めに実施しようとすると体力が残っていないので、だいたい種目間です。

まとめ

今回は「補強」「ウエイト」「スプリントドリル」いずれとも違うトレーニングのご紹介でした。

筋トレだけで足が速くなるわけではありませんが、個人的には有用なトレーニングのひとつではないかと思っています。

特に①のBox swingなどは一人でも手軽に実施できます。回数・負荷を調節しながらトレーニングに取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

今回はここまで。

【参考リンク】 

短距離走選手のための機能的なトレーニングエクササイズ