どうも、森です。
コラム兼備忘録として記事化してみました。
【caution!】
本稿は私見が入った記事です。
陸上競技を始め、各種スポーツで「体幹」が重要視されて久しくなります。
ココの部分はよく使うから重点的に鍛えよう…という根拠をもって鍛えている方も多いと思いますが、実際の筋肉の動きや意識に差はあるのでしょうか。
今回はそんな話題です。
概要
「体幹」とは、身体の頭部と四肢を除いた部分を指します。
「体幹トレーニング」の代表が腹筋であることから何となくお腹周りのイメージが強いですが、背中や腰周りも含めた胴体が「体幹」とされています。
「じゃあベンチプレスで胸筋を鍛えても体幹トレーニングじゃん」と言いたくなりますが、あまりそういう言い方はされていないようです。不思議ですね。
走りと体幹の関係
体幹(体幹筋)の主な働きは、体幹部の屈曲や姿勢の保持です。
短距離走はその競技特性上、手足が全速で振り回されることになります。また、接地の際は地面反力を効率よく推進力に変える必要があります。
体幹の「姿勢を保持する」働きは、姿勢がブレたり接地が潰れないためには極めて重要であるといえます。
では、具体的に体幹のどの辺りが重要視されているのでしょうか。
私見ですが、短距離走の世界では「丹田」と称される下腹の辺りがしばしば話題に上る気がします。
400mハードル日本記録保持者の為末 大 氏もこのように述べています。
(前略)実は走る際には足首や膝周辺の筋肉が頑張っている感じはほとんどない。
おしりと下っ腹のあたり、昔であれば丹田と呼ばれたあたりを、地面に着地する直前に締めるということを繰り返すだけで進めるようになる。速く動こうとしているのではなく、トップスピードの時でも、しかるべきタイミングで力を加えるべく待っているような局面すらある。
よい走りは、受け身でかつ、動きも激しくない。
関係論文
今回は愛知教育大学の研究「陸上競技短距離走における体幹筋活動 ―上位群と下位群の比較―」を参考にさせて頂きます。
この研究は100m走の記録上位・下位群の5名ずつに分け、最大努力での体幹部の筋活動(MVC)を測定し、試技時の筋活動の割合(%MVC)を測定しています。
試技は 最大努力のスクワットジャンプ、リバウンドジャンプ5回、クラウチングスタートダッシュの3種類行ったようです。
結果・考察
実験の結果、上位・下位群間で差がみられたのは次の項目でした。
見ての通り、上位群の脊柱起立筋・広背筋・腹直筋下部の活動が活発のようです。
特に腹直筋下部については、短い時間で筋を収縮させ体幹部の圧力を高める能力の差として考察されています。
体幹下部の筋圧力を高めるエクササイズなどにより、疾走能力向上へつながる可能性が考えられるようです。
表にはありませんが(恐らく有意差が出なかった?)30mSDにおいては下位群の腹直筋上部の%MVCが高く出ており、これは「上半身の力みによるもの」と考察しています。
まとめ
・脚の速い人は脊柱起立筋・広背筋や腹直筋下部の筋活動が活発
・腹直筋下部を鍛えることで疾走能力が向上するかも?
1本の研究データで物事は断言できませんが、速い人とそうでない人は丹田(下っ腹)あたりの意識に差があるのでは?と考えてしまうような内容でした。
そう考えると「腰ベルトを巻くと走りやすい気がする」という感覚は結構正解に近いのでしょうか。
腹直筋下部は上部に比べて鍛えるのが難しいとされていますが、地道に鍛えてみる価値はあるかもしれませんね。
今回はここまで。
【参考リンク】
陸上競技短距離走における体幹筋活動 ―上位群と下位群の比較―