どうも、森です。
今更書くほどではありませんが、やはりセンセーショナルな出来事でしたので言及します。
いやはや、本当に凄い修正力です。
陸上男子短距離で米フロリダ大のサニブラウン・ハキームが8日、アラバマ州バーミングハムで行われた全米大学室内選手権の60メートル予選で6秒54をマークし、2月に川上拓也(大阪ガス)が出した室内日本記録に並んだ。
6日に20歳となったサニブラウンは「わりとちゃんと出られたかな」と、課題にしていたスタートで上々の飛び出し。「加速も良かった。気持ち良かった」と笑顔で語るレースで、予選全体2番目のタイムを出した。
sanspo.com より引用
昨年は大学進学に伴う環境変化や怪我に悩まされ、5月に戦線を離脱。
今年1月のレースで復帰し6秒69、先月末は6秒60と調子を上げつつありました。
あまり画質の良い動画が見つかりませんでしたが、先月のレースよりもホロウェイ選手との差が詰まっているようにも見えます。
参考までに、先月のレースも
▲2月のレース
twitterのタイムライン上でも、特に陸上競技界隈は大きく沸いていました。
室内60mでサニブラウンハキームが6秒54の室内日本タイ!!
— 熊田大樹 @陸上 (@athletekuma) 2019年3月9日
<室内男子60m日本歴代7傑>
6秒54 川上拓也
6秒54 サニブラウン・ハキーム←New!
6秒55 朝原宣治
6秒56 桐生祥秀
6秒57 多田修平
6秒61 伊東浩司
6秒62 大槻康勝
6秒62 山縣亮太 https://t.co/cdCLcz9iPg
「60m」という距離は室内シーズンであること、選手のコンディションもまちまちであることから一概に評価するのは難しいといえます。
では、なぜ60mの記録がここまで取り上げられるか。理由は2つ考えられます。
まず、60mの記録は100mの記録と相関があることがわかっています。
物凄く雑な書き方になりますが「30mが速くても100mは余り速くない選手」はいるけれど「60mが速くて100mが遅い選手」は殆どいないということです。
2つ目の理由は、この記録を出したのがサニブラウン選手だから…ということでしょう。
当然ですが、60mは前半〜中盤が得意な選手が好記録を出す傾向にあります。
陸上競技をご存じの方には周知の事実ですが、サニブラウン選手は後半型の選手です。というより、2017年の世界選手権は18歳5ヶ月の史上最年少で200mの決勝まで行っていますので、世界的には200mメインの選手でしょうか。
とにかく、後半に強い選手が60mで好記録を出したとなれば、今シーズンはかなり記録が期待できます。
室内の60mとシーズン記録の関係ですが、たとえば前日本記録保持者(6秒55)の朝原 氏は、この記録を出した1997年シーズンにローザンヌで10秒08をマーク。これは日本人初の10秒0台であり、当時の日本新記録でした。
海外で出した記録ですので、自国で調整していればもっと出ていたかもしれません。
また、今やアジア最強のスプリンターとなった蘇 炳添 選手は今でこそ60m6秒42(世界歴代5位)という凄まじい記録を叩き出していますが、6秒55を出した2013年は100m10秒06。
この6秒55前後の記録は前半型の選手で10秒0台が期待でき、後半型の選手は9秒台も期待できる数値といえましょう。
実際の100mレースでの通過の目安は、筑波大学陸上競技研究室さんのコラムで見やすいものがありましたので引用させていただきます。
(前略)100m走において9秒台(9.99秒)を達成するためには,レース中の最高走スピードは約11.7m/秒,30mの通過タイムは3.81秒,60mの通過タイムは6.46秒が目安となることを示しています.
一方,宮代ほか(2013)は,多数の日本人スプリンターの100mレースを分析し,同様に通過タイムの目安を示しています.そして,宮代ほか(2013)の研究における100m10.00秒の目安は,30m通過タイムが3.83秒,60m通過タイムが6.46秒であり,先述の松尾(2009)の報告とほぼ一致しています.
筑波大学陸上競技研究室「100m9秒台」 より引用
したがって、シーズンに移行するにあたって60m地点で0.1秒ほどの短縮が求められます。これは十分達成可能な数値でしょう。
とはいえ、サニブラウン選手の最大目標は本人が公言するように「100m9秒台」ではなく「オリンピックの金メダルと世界記録」。今後もアッと驚くような記録を叩き出してくれることでしょう。
今年の世界選手権が今から楽しみですね。
今回はここまで。