向かい風参考記録

陸上競技 その他 いろいろ

短距離選手(スプリンター)にサプリメントを1つオススメするなら「クレアチン」を推します

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/W/Wetland/20190201/20190201230003.jpg 

caution!

本記事は2019/1/31に投稿されたものをリライトしています。

陸上競技関係の学生から「何か良いサプリメントはありませんか?」と訊かれることがあります。以前は「プロテイン」「ビタミンC(もしくはマルチビタミン)」の2つを推していましたが、最近はクレアチンもおすすめしています。

今回は、摂取方法などに関する私見も交えて好き勝手書いてみました。

概要

クレアチンは「瞬発系のエネルギー貯蔵量を増やすことができる」サプリメントです。

人が活動するエネルギーというのは、全て「ATP(アデノシン三リン酸)」から得られます。このATPを作り出すために「ATP-CP系」「解糖系」「有酸素系」3つの経路が存在しますが、この中で最も短時間にハイパワーなエネルギーを供給してくれるのが「ATP-CP系」です。

f:id:Wetland:20200810155421p:plain

ATP-CP系においてはクレアチンリン酸を材料としてATPが再合成されます。体内のATP貯蔵量は非常に少ないため、クレアチンリン酸は実質的にATPを蓄えるエネルギー貯蔵庫としての役割があります。

リン酸は体内で容易に産生できることから、クレアチンを摂取することにより体内のクレアチンリン酸を増加させられると考えられています。貯蔵量については、サプリメント等からの摂取により20〜30%ほど増やすことができるといわれています。

クレアチンの効果

10数年前、クレアチンが市販されだした頃は検索しても「筋肉内に水を引き込んで、筋力をアップさせてくれるらしい」くらいの情報しか出てきませんでした。しかし、現在は更に以下のような効果が判明しています。

f:id:Wetland:20200810144934p:plain

幾つか見慣れない単語が出てきていますが「挙上重量増加」「筋肥大」「筋肉痛軽減」「回復促進」といった効果があるようです。

ここまでくると怪しいサプリメントの誇大広告のようですが、国際スポーツ栄養学会におけるエビデンスカテゴリーは「A」(明らかに安全で効果があるもの)と分類されています。 

スプリンターとクレアチン

クレアチンの存在を短距離界に広めた一人として有名なのは、1992年バルセロナ五輪100mを制したリンフォード・クリスティでしょう。ただ、クリスティはドーピングもしていた(後年に出場停止処分も受けた)ので「本当にクレアチンの効果か?」感があったのは否めません。

とはいえ、今では多くのスプリンターがクレアチンを摂取しています。

日本陸連の見解

日本陸連発出の「陸上競技選手のための スポーツ栄養コンセンサス 2007」では、クレアチンの取り扱いについて以下のように書かれています。

クレアチンサプリメントは筋量と筋力を増加させると考えられるが、短距離選手はクレアチン摂取による過剰な体重増加に注意しなければならない。

ちょっと慎重な書き方ですが、概ねの効果は認めているということでしょうか。

ローディング期は必要か

「ローディング期」とは、1日20g(5g×4回)のクレアチンを5日間ほど摂取する期間です。これにより、早急に体内のクレアチン貯蔵量を増加させられると言われています。

ただ、私個人としては「スプリンターは無理してローディング期を入れなくても良い」と思っています。ローディング期を設けることで急激に体重が増加し、何らかの不具合が起きる可能性があるからです。

体重が1kg増加した場合、スプリント動作でかかる負担は単純計算でプラス1kgということにはなりません。状況にもよりますが、10倍やそれ以上の負荷になってくると考えられます。

1日5gの摂取だと、1ヶ月ほどで体内貯蔵量はマックスになるそうです。試合日などから逆算した計画的な摂取をおすすめします。

お湯に溶かして大丈夫なのか問題

もはやスプリンター関係ない話になってしまいましたが、一応書いておきます。「クレアチンは水に溶けにくいのが欠点なので、お湯に溶かして飲みましょう」みたいな話があります。

  • クレアチンは熱で変質する可能性がある
  • クレアチンは熱湯くらいでは変質しない

という2つの派閥が冷戦状態です。ちなみにサプリメントメーカーの対応もこれについてはまちまちで「全く問題ない」派と「加熱するのはやめてください」派があります。 

▲ビーレジェは加熱しないで欲しい派

ちなみに私個人の意見は「溶けにくいのって問題無くない?ビルダー飲みでいいじゃん」という感じです。クレアチン自体は基本無味ですし、BCAAのようにトレーニング中ちょっとずつ摂るようなものでもありません。糖質とセットで摂取すると良いという話もありますが、スポーツドリンクに溶かして飲むほどでしょうか。

まとめ

  • クレアチンは明らかに効果があるとのエビデンスがある
  • スプリンターにとって有益な効果があると考えられる
  • 無理してローディング期を設ける必要はないと思われる
  • 無理して液体に溶かす必要はないと思われる

個人的には1日5gのビルダー飲みでも十分に体感効果がありました。こればかりは個々人の感覚だと思いますので、ぜひご自分に合った摂取方法を見つけてみて下さい。初めての方はいきなり1kg越えの大容量ではなく、手軽なサイズのものをおすすめします。

 

今回はここまで。