どうも、森です。
少し前にサプリメントについての記事を書きましたが、今回は食事や減量に関する記事です。
元マラソン代表の原 裕美子 氏の再犯によって、アスリートを取り巻く環境について連日議論がなされています。
特に女子の長距離選手は、貧血など栄養失調状態に陥る選手が多いようです。
「食」というのは、人間の根源的な欲求のひとつです。まして、競技スポーツを行う選手は様々なストレスに晒されています。
減量や体質改善のため短期的な食事制限はあり得たとしても、それが恒常的になってくると悲惨な話が多くなってきます。
現状を鑑みるに、やはり食については「点」ではなく「面」で見ていくべきではないでしょうか。
「点」での食事管理
食事内容を一回一回、厳密に無駄がないかチェックしていく方法です。減量期のボディビルダーに近い食事コンセプトです。
メリットとしては「理屈上」栄養管理がし易いことでしょう。管理のきついチームでは、毎日の計量・食事内容を監督に報告する義務がある所もあったと聞きます。
デメリットとしては、無駄を徹底的に省くため栄養失調状態に陥る可能性があることと、圧倒的にストレスがたまるということでしょう。
知り合いのフィジーカーは「トレーニングと食事制限が同じくらいキツい」と漏らしていました。激しいトレーニングに加え、食事に制限をかけるのはかなりキツいといえましょう。
知る限り、スプリンターでこの「点」タイプの管理をしている人は少ない印象です。ざっと見つかった情報を見た限り、モーリス・グリーン(100m 9秒79・元世界記録)の食事内容がそういった思想に近いです。
何年にもわたって、自分の体を理解する努力をマウリスはしてきました。
(中略)
ですから自分の大好物であるクリスピークリーム・ドーナツを避けています。目先の喜びより、後で勝者になりたいという願望の方が打ち克っているのです。
(中略)
「通常炭水化物は食事から摂れるからむやみに必要無いが、タンパク質は必要です。特に質の良いものが」と話します。
通常マウリスは1日に2回しか食事を摂りませんが、1日を通じプロテインを摂り続けます。タンパク質は体重1キロにつき2グラムを目安に、1日およそ170グラム摂ります。
1日の食事の例
朝食・・・オートミール、プロテインドリンク、フルーツ
ウエイトトレーニング後の食事・・・プロテインドリンク
競技場での練習後の食事・・・プロテインドリンク
夕食・・・鶏の胸肉、野菜、プロテインドリンク
就寝前・・・プロテインドリンク
S&Fマガジンのサイト より引用
…うーん圧巻ですね。「食事」というより「餌」という感じでしょうか。
全盛時の末續選手も「餌」感覚で食事をしていたそうですが、あまり精神衛生上良くなさそうですね。
「面」での食事管理
この場合、最重要視するのは「栄養が足りているか」ということです。何かしらの余分な摂取が生じてしまうのは現実問題として仕方がない、という管理方法です。
摂り過ぎた分については翌日・翌々日含めた3日ほどの周期で調整していきます。「結果的にバランスが取れていれば良い」ということですね。
例えば、リレー代表の藤光選手などはこういった考えに近いと思われます。
普段アスリートはどんな食事をしているのか、どんなことに気をつけているのかなどよく聞かれます。
僕の場合は単純にバランス良く食べることだけを気をつけているくらいです。あまり制限をしてしまったりするとストレスになってしまうと思うので。
ふと出掛けたときによく食べるのはお好み焼きです。 なんとなくバランスが取れているし単純に好きだということもあります(笑)
食事 | ゼンリン陸上競技部選手ブログ より引用
元代表の高平 氏も、あまり厳密な管理はしていなかったようです。
好きな食べ物はラーメンです。エビはアレルギーで食べられないのと、茄子が嫌いです。外側の食感と中の食感が違うのが納得いきません(笑)。
本当に食事に関しては我慢しないということですね。生活全般に対してそうなんですけど、日本でスタンダートなことをやっていていいことって、競技をやっている上ではぼくはあまり無いと思っていて。
海外に行けば白米なんて無いし、お母さんのご飯は食べられないですし。そうじゃなきゃ生きていけないなら、世界大会に行ったら終了です。
【高平慎士選手】引退直前インタビュー より引用
長距離選手でいえば、かつての川内選手は全く食事制限をしないことで有名でした。
現実問題として減量が必要なときは…
上記で紹介した例からも、競技スポーツをしている選手の多くは経験的に「厳密な食事制限」にはメリット以上のデメリットがあると感じています。
かのマイケル・ジョンソン(200m19秒32・元世界記録)もインタビューでこう語っています。
「厳密な食事制限をして、競技能力が向上するとは思わない。1日3~4時間ウエイトトレーニングや練習をするなら、かなりのカロリーを必要とする。だから、何を食べても殆どのカロリーは消費されるんだ。実際カロリー制限をしたら、早く走る事は不可能になるよ。」
とはいえ、現実的にはパフォーマンス向上を期して、あるいは身体への負担軽減のために減量を要することもあります。
これがダイエッターであれば「運動量」を増やして解決ですが、アスリートの多くは量・質ともにかなりの所まで追い込んでいます。「量」を安易に増やせばトレーニングの「質」が下がったり、故障のリスクが出てきます。
短距離選手は補強運動を増やす
何となく「減量」と聞くと、ロングジョグや自転車漕ぎといった「長時間・長距離」を連想します。一方で、脚を消耗するタイプの練習はスプリントトレーニングの質を下げてしまいます。
スプリンターの名著「スプリント・トレーニングマニュアル」では、減量時にはジョギングではなく、補強運動を増やすことを勧めています。
これにより、脚を消耗せず身体も強化できます。副次的に基礎代謝も増えていくことでしょう。
長距離選手はバリエーションを増やす
従来、長距離選手は「走ってナンボ」の風潮がありました。しかし、最近の流れを見ていると先進的なチームであればある程「トレーニングのバリエーション」が多いように感じます。
例えば大迫選手も所属するオレゴン・プロジェクトでは、高強度程回数のウエイトトレーニングを取り入れています。
ウェイトトレーニング1/2
— 大迫傑 information (@C04388273) 2018年11月17日
ファラー達達オレゴンプロジェクトメンバーが、日本のような低強度高回数の補強ではなくて、ウエイトのような高強度低回数の補強を行います。
きちんと軸を整え、地面からの強い反発をもらえるように意識します。
詳しいことは後ほど… pic.twitter.com/X1v4IomZ8r
また、強豪チームでもドリルを始めとする「動き作り」を徹底している印象です。
特に長距離走は接地回数が多いわけですから、ロスの多いフォームはパフォーマンスの妨げになるだけでなく怪我の原因にもなります。
もしかすると長距離界も「今日はフィジカルトレーニングだけの日」「今日は動き作りだけの日」のように「敢えて走らない日」を入れるチームが出てくるかもしれません。
まとめ
話があちこちに飛んでしまいましたが、食事に関してはまず「充足しているか」を最優先とするべきでしょう。
その上で明らかな無駄があれば「いきなりゼロにする」のではなく、段階的に減らす・シーズンによって減らすといった措置が必要でしょう。
減量に関しては、特に女子選手は思ったようにいかないパターンも出てくると思います。
こちらに関しては、経験則だけでの指導ではなく各専門分野との連携が必要でしょう。
【参考リンク】福島 千里選手|JATI EXPRESS WEB|ザバス|株式会社 明治
とはいえ、まだまだこうした恩恵を受けられるのはトップ層で、アマチュアでは自己管理ベースにならざるを得ません。
こればかりは今後のスポーツ界の働きに期待するところですね。
今回はここまで。