【caution!】
現在、市販されていないスパイクについての記事です。
どうも、森です。
年末ということで、靴の整理をしていたら骨董品が出てきました。
概要
サイバーステルスは2004年、アシックスのフラッグシップモデルの短距離スパイクとして発売されました。
現在廃盤ながらも未だ一部で熱狂的な人気を誇る伝説のスパイク、サイバーゼロの後継モデルという位置付けでした。
▲これは2006年モデルだったかな…
パワーロスゼロ理論からパワープラス理論へ
ひとつ前のモデル、サイバーゼロの特徴は上質なフィッティングとフラットに地面を捉えられる構造。私自身、残念ながらサイバーゼロを履いたことはありませんので伝聞になりますが「ゼロ以降の市販スパイクは合わない」という選手を生み出すほど功罪のある(?)スパイクです。
サイバーゼロは、1998年バンコクアジア大会の100mで10秒00の当時日本記録を打ち立てた伊東浩司 氏が開発に関わっていたスパイクです。氏の引退後に発売されたサイバーステルスは、サイバーゼロのコンセプトとして打ち出されていた「パワーロスゼロ理論」を発展させた「パワープラス理論」を掲げて開発されました。
▲今にして思うとパワープラス理論とは何だったのか…
ベルトフィッティング&フラット構造は健在
見てのとおり、構造上の特徴としてはサイバーゼロの「ベルトフィッティング」「フラットなプレート構造」を概ね踏襲しています。
プレートがヒールカウンターの内側まで延長しているなどの奇抜な特徴があり、見た時はワクワクしました。
▲プレートの青色部分が踵部分まで伸びている
▲少しだけ母指球が地面に付けやすくなっているっぽい
使用感など
私自身、このスパイクはちょっと変わった使い方をしていて、クロノインクスと気分で使い分けていました。
面で接地する、スパイクはあまり関係ないタイプだから出来る芸当です。あまり意味はないですね…。
バネのような高反発
最初、このスパイクを履いたときは「高反発の板を装着しているみたいで怖いな…」と思いました。
ベルトフィッティングのスパイクを履いていなかったので、フィッティングが心配でしたが存外ブレませんでした。
ただし、初めての高反発タイプのスパイクだったのでバンバン跳ねてしまい、恐怖を感じました。脚への負担も当然大きく「これがパワープラス理論か…」と勝手に納得していました。
とはいえ、バネのように跳ねていく感じは当時人気を二分したクロノインクスには無いものでした。
▲全体的に剛性のある素材
最近の高反発スパイクは傾斜が付いていますので、上からグッと入れば推進力になります。
ただ、これはフラット寄りの構造でビヨンビヨンとした反発のあるものですから、しっかりとプッシュしてやらないと制御できない感じがありました。インクスは足を置きに行っても良かったんですが、これは置きにいくような力感では使えませんでした。
現行モデルはもう少し親切な設計のようですね。完全マニュアル車からオートマ車になったかのような、隔世の感があります。
他のスパイクとの比較
当時の人気を二分したクロノインクスと比較してみましょう。
今でこそスパイクの選択肢はグッと増えましたが、当時はオーダーかフラッグシップモデル2つから選んでいた感じでしたね…。
プレート構造・ピン配置
▲フラッグシップモデルながら全く違うコンセプト
見ての通り、全く違うコンセプトのもと作られたスパイクです。
クロノインクスが完全固定ピン7本に対しサイバーステルスは3本固定ピン、3本付け替え可能の計6本。
クロノインクスは前足部にピンを集中させ、フォアで抜けのよい構造をしていたのに対し、サイバーステルスは支え台がなくピンもより中足部に近いところまで付いています。
▲左からクロノインクス、サイバーステルス、アディゼロプライムsp
見ていて気づきましたが、ピン配置だけ見るとアディゼロプライムspにかなり似ています。
もちろん、アディゼロプライムspはもっとハードな履き心地で前足部で接地させてくるので異なるコンセプトのスパイクなんですが…。
プレートの傾斜
▲古いので参考程度に
なにぶん古いスパイクで変形している可能性があります。参考程度にといったところですが、やはりサイバーステルスの方がフラットです。
クロノインクスがスッと抜けていく構造なのに対し、サイバーステルスはスパイク自体のしなりで一気に離地する感じでした。
良い点・悪い点
とにかく高反発
良くも悪くも高反発です。私自身、レース用のスパイクは高反発でナンボだと思っていますので、反発が強すぎるとは思いませんでした。
アディゼロプライムspのように前足部接地&高反発ですと足底をよく攣りますが、サイバーステルスはそういった不具合もありませんでした。
ただし、前モデルのサイバーゼロ自体がそこまで高反発をウリにしておらず「ロスを無くす」コンセプトでしたので、従来のユーザーはかなり困惑したのではないでしょうか。
フィッティングは正直微妙だった
「微妙だった」というと若干語弊があります。
ブレ自体はそこまで感じなかったのですが、接合部が足にメリこんでしまう構造でした。履き始めは靴擦れしました。
今のモデルだと考えられないと思いますが、ベルト部分の本体が謎のワイヤーで結合されており、その部分がめり込んできました。
▲謎ワイヤーその1
▲謎ワイヤーその2
総評
結果からいうと「まさに過渡期のスパイク」という感じです。
とはいえ、後続のサイバーオーラ〜ソニックスプリントを経て、今期のジェットスプリントはかなり高評価を得ています。
ここまで高反発をウリにしてきたアシックスにとって、ジェットスプリントは久々に高反発をウリにしない新境地。
今後2020年に向けて、アシックスがどういった戦略で来るのか。楽しみですね。
…サイバーゼロ、ついでに復刻しませんかね。笑
今回はここまで。