どうも、森です。
色々ありまして連続更新が途絶えてしまいました。
今日は久々に陸上競技の話題です。
今回、200m、300m、400mの元日本記録保持者であります原田先生の講演に行ってきました。
行ってきました、というよりは記念行事のゲストで来て下さいました。備忘録兼ねてお聞きしたことなど書いていきます。
about原田先生
まず、原田先生についてざっくり書いていきます。
1955年宮城県石巻市生まれ、日本体育大学卒業。大学在学中に、日本学生対抗選手権で200mを4連覇し、また日本選手権では100m、200m、400mで優勝する。
男子200m、300m、400mの元日本記録保持者。指導者としては、光カメラ実業団チーム監督、日本陸上競技連盟男子短距離強化部長、同女子短距離強化部長、日本代表短距離ヘッドコーチを歴任。野村綾子(女子100m元日本記録保持者)、小島初佳(旧姓・新井、女子100m、200m元日本記録保持者)など、日本を代表するスプリンターを育成した実績がある。
旧福岡ダイエーホークス、旧ジェフユナイテッド市原でもランニングの指導にあたった。現在は日本陸連強化副委員長兼ジュニア強化部長。クレーマージャパン副社長
このトレーニングで速く走れる! 実用BEST BOOKS より引用
ちょっと古い本からの情報ですので、現在は日本陸連の強化役員などのポジションが少し変わっています。現在はパラ陸上関係にも携わられているようです。
選手としては100m〜400mまで日本選手権を制したという、凄まじい実績があります。
ちなみに100mの元・日本記録10秒00をもつ伊東浩司先生も元は400mの選手でした。しかし、日本選手権は400mで勝っていません。いかにこの3種目を制することが困難かがわかります。
そんな原田先生ですが、指導者としての実績も凄まじく、日本陸連での強化委員を歴任。今日の活況を支えた一人といって過言ではないでしょう。
北国の選手の特徴
最初の話題は、近年の道内出身選手の躍進について。
短距離でいうと、長年日本の陸上界を支えた高平選手、ベテランの域に差し掛かった福島選手、アジア大会の200mを制した小池選手など名スプリンターを多く輩出しています。
今年の北海道勢の活躍
今年でいうとインターハイ女子100m決勝の8人中4人が北海道勢という、異常ともいえる事態を起こしました。
中学生も10秒台が2名立て続けに出るなど、男女ともに中高生の活躍が目立ちます。
冬場の土台作りが功を奏したか
専門家の中でも意見が分かれることの多い「冬期トレーニング」の話題。
「速く走ることが目的なのだから、冬期もスピードを求めるべき」という意見と「冬期こそ徹底して土台作りをするべき」という意見。
原田先生は、ご自身が宮城県出身ということもあって年中スパイクを履いてがんがんスピードを求めることに対しては懐疑的なようでした。
「年中暖かいところを求めて、どんどんスピードを出して…じゃあ、そのスピードを出すための土台はいつ作るんだと私は思いますけど…。」といった旨のご意見でした。
私自身も、特にジュニア期の選手は土台を徹底して作る時期が必要なのかな…と思っています。
代表選手について
昨今、活況をみせる短距離界。日本歴代記録がここ2年でガラリと変わったことからも、新たな時代に突入していることが伺えます。
タイム | 風速 | 名前 | 所属 | 場所 | 日付 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 9秒98 | +1.8 | 桐生祥秀 | 東洋大学 | 福井 | 2017年9月9日 |
2 | 10秒00 | +1.9 | 伊東浩司 | 富士通 | バンコク | 1998年12月13日 |
+0.2 | 山縣亮太 | セイコー | 大阪 | 2017年9月24日 | ||
+0.8 | ジャカルタ | 2018年8月26日 | ||||
4 | 10秒02 | +2.0 | 朝原宣治 | 大阪ガス | オスロ | 2001年7月13日 |
5 | 10秒03 | +1.8 | 末續慎吾 | ミズノ | 水戸 | 2003年5月5日 |
6 | 10秒05 | +0.6 | サニブラウン・アブデル・ハキーム | 東京陸協 | 大阪 | 2017年6月24日 |
−0.6 | ロンドン | 2017年8月5日 | ||||
7 | 10秒07 | +1.9 | 江里口匡史 | 早稲田大学 | 広島 | 2009年6月28日 |
+1.8 | 多田修平 | 関西学院大学 | 福井 | 2017年9月9日 | ||
9 | 10秒08 | +1.9 | 飯塚翔太 | ミズノ | 鳥取 | 2017年6月4日 |
−0.9 | ケンブリッジ飛鳥 | ナイキ | 大阪 | 2017年6月23日 |
wikipediaより引用
単純に10傑のうち半分がここ2年で入れ替わっています。
なぜ、記録が向上したのか
2016年のリオ五輪リレー銀メダルを皮切りに、ここまで日本短距離が躍進したのはなぜでしょう。
原田先生が仰るには、1991年に東京で行われた世界選手権がひとつの契機になったのではないかと。この大会で今まで常識だと思っていた走り方にかなり誤りがあったことがわかったそうです。
世代で言いますと、このとき指導を受けた選手達が現在の指導者世代になります。データに経験則がプラスされ、選手たちがより良い指導が受けられる環境となったのも一因のようですね。
次の世界選手権・五輪代表選手について
これだけ好記録が出てくると、同時に難航してくるのが代表選考です。
恐らく2019年の世界選手権は上記10傑のメンバーの内で決まるだろうということでしたが、走順適性のこともあります。
また、急激に記録を伸ばした選手がいればメンバー入りも十分にあり得るようです。
ワールドランキング制度について
国際陸連は2019年より、世界大会の参加資格を標準記録制度から獲得ポイント制に移行することを決定しています。
大会ごとにグレード付けされ、順位に応じてポイントが付与されます。ランキング何番以内なら世界大会出場…といった具合になるようです。
これにより、日本選手権だけ出場して勝てば代表入り…といった戦法が実質取れなくなりました。好条件の大会で一発出てしまった記録で世界大会に参加することも実質不可能でしょう。
年間通して転戦が必要になると思われますので、ドーピングへの抑止力も見越した制度変更でしょう。ともかく、これからは「速さ」だけでなく「強さ」も必要となってくるでしょう。
次の9秒台は…
原田先生の立場もありますから「あまり断言できませんが…」と前置きした上で、やはり安定感のある山縣選手を挙げておられました。
ケンブリッジ選手もコンディション次第で9秒台は出せる水準。今シーズン怪我のあったサニブラウン選手・不調の多田選手は巻き返しに期待とのことでした。
まとめ
かなり省略して書いてしまいましたが、たいへん興味深い講演でした。
今後とも、地方の選手は「学校」という単位のみならず「地域」ぐるみでしっかり育成していくことが重要ではないかと仰っていました。
こうして育った選手が、また地域に戻ってくる…そんな循環を、これからどれだけ作っていけるのか。
微力ながら、今後も考えていきたいと思った次第です。
今回はここまで。